研究課題/領域番号 |
26462770
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
守谷 俊 自治医科大学, 医学部, 教授 (50267069)
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研究分担者 |
杉田 篤紀 日本大学, 医学部, 助手 (70599745)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | induced hypothermia / MEP / SEP / 超早期予後評価 |
研究実績の概要 |
前年度までの研究(23592685)では、昏睡を合併した心停止蘇生後脳症の予後評価を早期に行う手段として体性感覚誘発電位:SEPの有用性を結論付けられた。しかしながら、SEPにおける大脳皮質感覚領野の誘発電位を意味するN20(潜時20msに記録される陰性の波)の出現は意識が回復するために必要な条件であるが、N20が存在するからといって意識障害が改善するわけではない。本研究では、SEP以上に脳虚血に鋭敏な運動誘発電位:MEPを用いて意識回復が期待できる患者の絞り込みに関する研究を開始した。 研究では予想以上の症例数を上半期で経験できたが自身の異動により研究が一時的にストップした部分が多少影響しており対象症例を50例と見込んでいたが34例においてSEPとMEPの記録を行うことが出来た。来院直後にSEPを施行した34例のうちN20が記録できた例は26例であった。同時に記録したMEPでは20例に大脳皮質運動野に相当する電位が記録された。さらにはMEP運動領野成分が記録された症例は全例 SEP N20が認められた。つまりMEP運動領野成分のみが記録された症例は認めなかった。以上のことから、脳低温療法を施行する前に行う電気生理学的検査において従来報告したSEP N20よりもMEP運動領野成分の記録の方が予後良好例の症例絞り込みが可能であった。昏睡を合併する心停止蘇生後症候群に対する予後評価に虚血に鋭敏である大脳皮質運動領野を反映するMEPを施行することは病院前の情報(心停止時の心電図。目の前で倒れる現状を見たかどうか。すぐに心肺蘇生を開始したかどうか)のみの情報より予後良好な患者を選択できる可能性を示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
年間を搬送される症例数から計算したが、自身の異動により研究の一時中断が否めなかった。そのため予定した対象症例数を30例前後と予想していたが達しなかった。上半期の症例受け入れが症候であったことが救いであった。今回の研究では研究の対象となったSEP・MEPの記録が行えた昏睡を合併した心停止蘇生後脳症の症例は34例であった。記録を行って検出方法の問題や記録の不備で脱落した症例はなかったが、目標症例数には少し及ばなかった。神経学的評価についても、心停止後蘇生後の長期観察による意識障害の改善見込みは低いと報告されているが予後の確認にも注意していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
現時点では、SEP N20が記録された症例の中にMEP運動領野成分の記録がされた症例が全例含まれている結果となった。さらにはSEP N20が記録されたのは26例であったが、MEP運動領野成分が検出されたのは20例であった。SEP N20が記録されずにMEP運動領野成分が記録された症例は1例も存在しなかった。現時点ではSEPやMEPの記録は来院時に昏睡を合併した心停止蘇生後症候群の症例のみに行っているが、今後は脳低温施行中のSEP記録と脳低温療法施行前のMEP記録の相関性についても検討する必要性がある。ただし、SEP N20の記録された症例群の中にSEP運動領野成分の記録された症例が存在したことから今後も症例数をさらに増やし、電気生理学的超早期予後評価の有用性について明確にしていきたい。
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