昏睡を合併する心停止蘇生後症候群に対する神経学的予後の早期予測は困難であるとされ、現在のところ、来院直後の初療室で有用な評価方法はない。そのため、神経学的予後が良好であることを期待される症例のみに集学的な治療を行うことが困難となっている。 予後良好であることが期待できる症例に対してその後の体温管理療法を含めた集中治療を行うことは、人的及び物的に資源を集約化できる利点がある。そうした現状から、予後評価のうち、最も客観的で迅速性のある検査方法として有力な電気生理学的手法を用いた手法の可能性を強調してきた。 電気生理学的検査の中でも体性感覚誘発電位N20に関しては、早期予後を予測できる可能性を前回の研究で報告した。今回は体性感覚誘発電位より虚血時の電位変化の感度が高いとされる運動誘発電位を用いて、今までの予後評価より感度の高いものとなるかどうかの検討を行った。その結果として、体性感覚誘発電位N20よりも運動誘発電位の方が神経学的予後良好例の集約に関して可能性の高いことが示された。体性感覚誘発電位N20では、初療時に認められたN20が、心停止24時間後の時点で消失する現象が記録されていたが、そうした症例では、運動誘発電位が記録されなかった。 以上の事実から昏睡を合併した心停止蘇生後症候群の神経学的予後の症例の絞り込みには、体性感覚誘発電位N20よりも運動誘発電位が有用である可能性が示唆された。
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