研究課題/領域番号 |
26462772
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研究機関 | 藤田保健衛生大学 |
研究代表者 |
秦 龍二 藤田保健衛生大学, 医学部, 教授 (90258153)
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研究分担者 |
武山 直志 愛知医科大学, 医学部, 教授 (00155053)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 脳虚血 / 神経幹細胞 / ES細胞 / 再生医療 |
研究実績の概要 |
幹細胞の自己増殖能と多分化能、栄養因子分泌能などの機能は、虚血性脳血管障害の治療に有用と考えられている。例えばES細胞や神経幹細胞の脳梗塞巣への移植が脳虚血障害の治療に有効(Brain 129:3238-48, 2006)であることが報告されている。各種幹細胞のなかで、ES細胞やiPS細胞は発癌性という問題を抱えているが、組織幹細胞とは異なり、十分な量を確保することが可能である。従って、ES細胞やiPS細胞から神経前駆細胞(= NP)への分化誘導を確実に行い、発癌性を完全に制御することが可能になれば、両者は臨床上きわめて有用な幹細胞と考えられる。 近年胚性幹細胞(= ES細胞)から神経細胞への分化誘導法が著しく発達し、SFEB法(serum-free floating culture of embryoid bodylike aggregate)を用いると、効率良く神経前駆細胞(= NP)に分化誘導できるようになった。更には大脳皮質になることが運命づけられた大脳皮質神経前駆細胞(= CNP)を分化誘導することも可能となってきた。そこで本研究ではES細胞由来CNPを用いて、脳血管障害に対する革新的な神経再生治療法の開発を目的としている。 前年度の研究ではCNPを中大脳動脈閉塞直後、閉塞後3日目、10日目に移植した場合、10日目に移植すると生着するCNPが最も多いことを報告した。そこで研究2年目の本年は、ES細胞から作製したCNPを大脳皮質のみに脳梗塞を起こす脳虚血モデルマウスに移植し、神経再生療法としての有効性を検討した。まずマウス中大脳動脈閉塞モデルを用いて、閉塞後10目にCNPを移植した。中大脳動脈閉塞後10日目にCNPを移植した群ではコントロール群に比して優位に虚血半球の萎縮が抑制されることが明らかとなった。現在その脳虚血保護機構の解明を目指して検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今回、脳虚血後10日目にES細胞由来神経前駆細胞を移植してやると、脳虚血後の虚血脳半球萎縮を優位に抑制できることが明らかとなった。我々はこの神経保護効果は新たに移植した神経前駆細胞が既存の神経組織と神経連絡をすることで、脳虚血後の2次変性を抑制するという仮説を立てている。そこで組織学的に移植神経組織と既存組織とに投射経路ができあがっていることを確認しようと試みているが、明らかなシナプス結合を組織学的には証明できていない。現在免疫電顕法を用いて詳細な検討を繰り返している最中である。このため全体計画としてはやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
2年目の研究成果としてES細胞由来大脳皮質神経前駆細胞を脳虚血10日目に脳移植すると明らかな虚血脳保護効果があることを明らかとした。研究3年目にあたる本年はこの虚血保護効果の詳細を検討する。具体的には移植されたES細胞由来大脳皮質神経前駆細胞と既存の脳領域とに神経投射(シナプス結合)があるかどうかを検討する。神経投射の有無は免疫電顕法やトレーサー法を用いて検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
「現在までの進捗状況」の項でも記述した様に、ES細胞由来大脳皮質神経前駆細胞と既存の脳領域とに神経投射(シナプス結合)があるかどうかの検討を現在続けている。この検討は投射を確認できればすぐに終了するが、明らかな投射が見られない場合には、本当にないのか、それても検討が十分でないかの見極めに時間がかかっている。従って研究進捗状況はやや停滞しており、使用額に予定より若干誤差が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
移植されたES細胞由来大脳皮質神経前駆細胞と既存の脳領域とに神経投射(シナプス結合)があるかどうかを検討を行っているが、現在の所明らかなシナプス結合を組織学的には証明できていない。今後神経投射の有無は免疫電顕やトレーサー法を用いて検討を行う。生じた次年度使用額はこれらの実験に必要な試薬等の購入代金にあてる。
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