研究課題
幹細胞の自己増殖能と多分化能、栄養因子分泌能などの機能は、虚血性脳血管障害の治療に有用と考えられている。例えばES細胞や神経幹細胞の脳梗塞巣への移植が脳虚血障害の治療に有効(Brain 129:3238-48, 2006)であることが報告されている。各種幹細胞のなかで、ES細胞やiPS細胞は発癌性という問題を抱えているが、組織幹細胞とは異なり、十分な量を確保することが可能である。従って、ES細胞やiPS細胞から神経前駆細胞(= NP)への分化誘導を確実に行い、発癌性を完全に制御することが可能になれば、両者は臨床上きわめて有用な幹細胞と考えられる。近年胚性幹細胞(= ES細胞)から神経細胞への分化誘導法が著しく発達し、SFEB法(serum-free floating culture of embryoid bodylike aggregate)を用いると、効率良く神経前駆細胞(= NP)に分化誘導できるようになった。更には大脳皮質になることが運命づけられた大脳皮質神経前駆細胞(= CNP)を分化誘導することも可能となってきた。そこで本研究ではES細胞由来CNPを用いて、脳血管障害に対する革新的な神経再生治療法の開発を目的としている。前年度の研究ではCNPを中大脳動脈閉塞直後、閉塞後3日目、10日目に移植した場合、10日目に移植すると生着するCNPが最も多いことを報告した。そこで研究2年目の本年は、ES細胞から作製したCNPを大脳皮質のみに脳梗塞を起こす脳虚血モデルマウスに移植し、神経再生療法としての有効性を検討した。まずマウス中大脳動脈閉塞モデルを用いて、閉塞後10目にCNPを移植した。中大脳動脈閉塞後10日目にCNPを移植した群ではコントロール群に比して優位に虚血半球の萎縮が抑制されることが明らかとなった。
すべて 2016
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J Alzheimers Dis.
巻: 51 ページ: 997-1002
10.3233/JAD-151139