研究実績の概要 |
心虚血時、心臓交感神経からはノルエピネフリンが、血小板からはセロトニンが大量に放出され、これらのモノアミンはモノアミンオキシダーゼにより代謝される。この代謝過程で過酸化水素を発生するが、過酸化水素から生成される活性酸素ヒドロキシラジカルは、心虚血・再灌流時の心筋細胞傷害を引き起こすことが示唆されている。 我々は麻酔下ラットの心臓にマイクロダイアリシス法を用い、trapping agentとして4-HBAをマイクロダイアリスプローブより局所投与し、4-HBAの心筋間質hydroxyl radicalとの反応物である3,4-DHBAを組織から回収して、HPLCを用いて測定することにより、心筋間質におけるヒドロキシラジカル産生をin vivoでモニターすることを可能にした。 次に麻酔下ラットの左室虚血部において、心虚血・再灌流時のhydroxyl radical産生をモニターしながら、マイクロダイアリシスプローブを介してモノアミンオキシダーゼ阻害剤pargylineを局所投与し、モノアミン代謝を阻害することにより、再灌流時のヒドロキシラジカル産生が減少することを明らかにした。また、マイクロダイアリシス法による心虚血・再灌流時のミオグロビン放出モニターは、心筋細胞傷害の指標となることを示してきたが、この方法を用いて、麻酔下ラットの左室虚血部において、pargylineの局所投与によりモノアミン代謝を阻害することにより、再灌流時の心筋細胞傷害が減少することを明らかにした。 すなわち、心虚血・再灌流時に心臓交感神経終末から放出されるノルエピネフリン、および血小板から放出されるセロトニンは、receptorを介して心筋細胞傷害を引き起こすだけでなく、モノアミンオキシダーゼを介してヒドロキシラジカルを産生して心筋細胞傷害を引き起こすことが明らかになった。
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