研究課題/領域番号 |
26462775
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
長谷部 晃 北海道大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (90281815)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | Candida albicans / 経口免疫寛容 / 制御性T細胞 |
研究実績の概要 |
口腔カンジダ症は、加齢に伴い検出率が上昇する口腔常在性の真菌であるCandida albicansが原因となることが知られている。しかしながらなぜC. albicansが常在できるのかは不明のままである。 我々は、口腔のC.albicansが唾液や食べ物とともに飲み込まれることでC. albicansに対する経口免疫寛容が誘導されているのではないかと考えている。すなわち、C. albicansを経口摂取することで免疫抑制性のT細胞(制御性T細胞、Treg)が誘導されており、加齢によりC. albicans特異的Tregの割合や機能に変化が生じているのではないかと考えた。 まず最初に、マウスを用いてC. albicansの経口摂取がC. albicansに対する特異抗体の誘導にどのような影響を与えるかを調べることにした。具体的には、マウスに経口的に生きたC. albicansあるいは生理食塩水を摂取させた後、フロイントの不完全アジュバントとともにC. albicansをマウスの背部皮下に免疫した。この免疫を3回行い、免疫終了まで経時的に血液ならびに唾液中を採取し、それらに含まれるC. albicansに対する特異的なIgG、IgM、IgAなどの抗体価の変化をELISA法で調べる予定である。現在、マウスの免疫と血液・唾液の採取を行っているところであり、これらの実験を、若いマウス(8週齢)と加齢マウス(45~50週齢)を用いて行うことで、C. albicans特異的な抗体の誘導に及ぼす加齢の影響を明らかにできる。抗体誘導に及ぼす影響を明らかにした後に、マウスの腸管におけるTregの解析を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウスにおけるC. albicansに対する経口免疫寛容を調べるにあたり、まずC. albicansの経口摂取がC. albicans免疫による抗体産生誘導に及ぼす影響を確認するべきであると考えた。我々はすでにマウスの免疫を開始しており、血液だけでなく唾液の採取も行っているため、分泌型の特異的なIgAも調べられる。唾液の採取は、副交感神経末梢を興奮させる作用を持つ塩酸ピロカルピンを利用して可能となった。 経口免疫寛容が獲得免疫系に及ぼす影響を調べるための第一歩としてこれらの実験がすでに進んでおり、近いうちにそれらの基礎データが得られる予定である。さらに、すでにC. albicans特異的なTregの解析に必要な抗体なども入手しており、C. albicansの経口摂取が及ぼす抗体価への影響が明らかになり次第、腸管におけるTregの確認を行う準備が出来ているため、おおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
まず、若いマウスと高齢マウスの間で、C. albicansによる免疫に対する特異抗体産生能に違いがあるか、そしてそれぞれのマウスにおいてC.albicansを経口摂取した場合の影響などをELISA法などで確認する。抗体産生に違いがあれば、実際に腸管におけるパイエル板、粘膜固有層ならびに腸管膜リンパ節からのリンパ球を調整し、特にTregの存在に注目して解析する。さらに、C. albicansの成分を認識することが知られているTLR2が経口免疫寛容ならびに特異的抗体産生に及ぼす影響を調べるために、TLR2遺伝子欠損マウスを用いて同様なことを調べる。 これらに引き続いて、マウスの腹腔内あるいは静脈内に生きたC. albicansを接種し、C. albicansを経口摂取した場合としていない場合におけるマウスの生存率の違いについて確認することで、経口摂取が全身の免疫系に及ぼす影響を考察する。 抗体産生能に違いがない場合は、経口摂取するC. albicansの量や頻度を検討し、本当にそれが確かであるのか確認する。その結果抗体産生能に違いがない場合は、なぜ経口免疫寛容が誘導されないのかを卵白アルブミンの経口摂取の場合との違いを調べる事で解析する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年3月に納品され、平成27年4月の支払となった試薬やマウスなどの消耗品があったため未使用額がある。
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次年度使用額の使用計画 |
未使用額は平成27年3月に納品された試薬やマウスなどの平成27年4月の支払に充てる。
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