口腔カンジダ症は口腔常在性の真菌であるCandida albicansが主たる要因となる日和見感染症である。C. albicansは、加齢に伴い口腔からの検出率が上昇するが、なぜ口腔内に常在できるのかは依然として不明のままである。 我々は、C. albicansが口腔に常在できるのは、C. albicansに対する経口免疫寛容が誘導されているからなのではないかと考えた。つまり食物とともに経口的にC. albicansが摂取されるとC. albicansに対して特異的な制御性T細胞が誘導されるのではないかと考えたのである。経口的に摂取されたC. albicansより特異的な免疫抑制状態にあるか確認するために、マウスへのC. albicansの経口投与がC. albicansに対する特異的な抗体産生誘導に及ぼす影響を調べた。用いたマウスは、C57BL/6の野生型ならびにTLR2ノックアウトの若いマウスと高齢マウスである。これらのマウスにC. albicansをあらかじめ経口投与してからC. albicansを免疫した場合と、経口投与をせずに免疫した場合とで、C. albicans特異的血中IgG、IgM、IgEならびに糞便中IgAの比較をした。抗体価の測定にはELISA法を用いた。その結果、高齢マウスの場合においてC. albicansを経口摂取した場合でも、若いマウスと比較して特異的な抗体誘導が減弱することはなかった。また、C. albicansの認識において重要な役割を果たすことが知られているTLR2のノックアウトマウスにおいても、野生型のマウスと変わらない傾向を示したことから、今回の研究で用いた条件下においては、C. albicansの経口投与が特異的な免疫抑制を誘導することはなく、TLR2もC. albicansに特異的な抗体産生誘導には影響しないとわかった。
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