ヒト病原体である化膿レンサ球菌は咽頭や皮膚へ局所性の化膿疾患を起こすだけでなく,侵襲性疾患を惹起する.病態発症過程において,本菌は様々な環境因子と宿主因子を感知し,分泌タンパク質の産生を調節する.臨床分離頻度が高い血清型の菌株を用いて,菌体外環境温度が線毛の発現に及ぼす影響について検討した結果,特定の染色体領域を有する菌株において,温度感受性の線毛発現が認められた.この発現機構を解析したところ,環境温度に依存する転写因子の翻訳効率に起因することが明らかになった.したがって,化膿レンサ球菌は菌体外の環境温度に対応し,付着因子の産生を制御することが示唆された.
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