研究課題/領域番号 |
26462780
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
住友 倫子 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (50423421)
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研究分担者 |
川端 重忠 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (50273694)
中田 匡宣 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 准教授 (90444497)
山口 雅也 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (00714536)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | レンサ球菌 / 上皮バリア |
研究実績の概要 |
A群レンサ球菌が劇症型レンサ球菌感染症 (STSS) を発症させるためには,物理バリアである上皮細胞層を突破する必要がある.実際,咽頭や皮膚に形成される化膿性病変の病理像から,本菌の病原因子による宿主上皮の細胞間接着障害が感染成立に重要であると考えられている.我々は,STSS患者由来の臨床分離株が細胞間接着分子の傷害により,トリセルラータイトジャンクション (TJ) から上皮バリアを突破することを見出した.本研究では,トリセルラーTJにおけるA 群レンサ球菌の局在に関与する細菌・宿主因子を同定し,本菌の上皮バリア突破機構との関連性を検証した. A群レンサ球菌はヒトPLG依存的に,トリセルラーTJに局在することを確認した.また,菌体付着部位では細胞間接着を担うZO-1の分解が認められ,菌体がトリセルラーTJから深部に侵入している様子も観察された.一方,トリセルリンノックダウン細胞では,菌体のトリセルラーTJへの局在性が低下した.トリセルリンはヒトPLGのレセプターであり,トリセルリン細胞外ループの217Lysと252LysがPLGとの相互作用に重要であることを明らかにした.また,PLGは菌体表層のStreptococcal surface enolase (SEN) とトリセルリンを繋ぐ分子ブリッジとして機能し,A群レンサ球菌のトリセルラーTJへの局在に関与することを確認した.さらに,野生株の上皮バリア通過能および細胞間接着分子分解能は,SEN変異により著しく抑制された.以上の結果から,化膿レンサ球菌は宿主PLGを分子ブリッジとして利用し,トリセルラーTJから上皮バリアを突破することが示唆された. 以上の結果から,A群レンサ球菌は宿主PLGを分子ブリッジとして利用し,トリセルラーTJから上皮バリアを突破することが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度の研究計画に基づき,A群レンサ球菌によるトリセルラーTJの破綻と菌体の上皮バリア突破の関連性を明らかにした.また,平成26~27年度に行った研究内容は,Scientific Reports 2016年1月号に掲載された.従って,本申請課題は順調に進展していると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
我々はこれまでに,複数の臨床分離株において,溶血毒素の一つであるストレプトリジンS (SLS) がカルシウムイオン依存的な宿主細胞内システインプロテアーゼであるカルパインの活性化を誘導して,上皮細胞間の接着分子であるオクルディンやE-カドヘリンの分解と細胞間隙部位からの菌体の上皮バリア突破が起こることを明らかにしている.今後は,宿主上皮細胞上のSLS 受容体を同定する.同定されれば,SLS-受容体複合体から細胞内カルシウム濃度の上昇およびカルパスタチンの分解に至るシグナル伝達経路を解析する.
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次年度使用額が生じた理由 |
実験動物購入費として確保しておいたが,ノックダウン細胞を用いた系で実験を実施したため,次年度使用額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
当該助成金は平成28年度の研究計画の中で,SLS受容体を同定する際のMS解析受託解析費用として使用する予定である.
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