研究課題/領域番号 |
26462787
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
村上 圭史 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学系), 助教 (10335804)
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研究分担者 |
弘田 克彦 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学系), 准教授 (60199130)
三宅 洋一郎 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学系), 教授 (80136093)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 抗菌薬抵抗性 / 緑膿菌 / c-di-GMP / 付着菌 |
研究実績の概要 |
慢性難治性感染症の代表的な例として,バイオフィルム感染症が問題となっている。バイオフィルム形成菌は抗菌薬や消毒薬に対し,抵抗性を示すことがその理由として考えられており,我々は,バイオフィルム形成以前の付着細菌が抗菌薬抵抗性を獲得していることを見出している。抗菌薬抵抗性とは、抗菌薬存在下では増殖出来ないものの死滅せず、抗菌薬が無くなると再び増殖する現象であるが、そのメカニズムは不明である。近年,細胞内セカンドメッセンジャーであるc-di-GMPがバイオフィルム形成に重要な役割を果たすことから注目されており,本研究では,c-di-GMPと抗菌薬抵抗性の関連を明らかとすることを目的としている。 1. c-di-GMP定量法の開発 これまでのLC-MS法によるc-di-GMPの定量では,限られた施設でしか定量を行う事が出来なかった。本研究では,簡便なc-di-GMPの定量法を確立するため,リボザイムに着目し,c-di-GMPに特異性の高いRNA分子を用いることで,定量法の確立に成功した。この定量法により,マクロライド系抗菌薬であるクラリスロマイシンの添加により,c-di-GMP濃度が上昇することが確認された。 2. 臨床分離株のスクリーニング 当研究室で保有している,緑膿菌臨床分離株300株の中で,付着菌での抗菌薬抵抗性が低下している株を6株見出した。これらの株では, RT-PCRの結果,psl遺伝子の発現量が低いことが明らかとなった。これらの株では,浮遊状態でのc-di-GMP濃度は,PAO1株と変わらないため,付着時に誘導される細胞内シグナル伝達に違いがあることも推測された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1. c-di-GMP定量法の確立 リボザイムを応用したc-di-GMPの新規定量法の確立に成功した。しかし,菌体からのサンプル抽出法や,菌体量による補正方法などについては,まだ改善の余地があるため,現在,より正確な定量法の確立に向けて,プロトコールの改善を行っている。また,クラリスロマイシンの添加により,バイオフィルム形成が促進されることから,c-di-GMP濃度の上昇が予測されたが,リボザイムを応用した定量法により,菌体内のc-di-GMP濃度が上昇していることが確認された。 2. 臨床分離株のスクリーニング 当研究室で保有している,緑膿菌臨床分離株300株の中で,付着菌での抗菌薬抵抗性が低下している株を6株スクリーニングにより見出すことが出来た。これらの株は,浮遊菌ではc-di-GMP濃度は,他の株とそれ程変わらないものの,psl遺伝子の発現量が低かった。この事から,付着時に誘導されるpsl遺伝子の発現が,上昇していないことが推測された。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの結果から,緑膿菌臨床分離株中で,付着菌での抗菌薬抵抗性が低下している株を6株スクリーニングにより見出すことが出来た。これらの株の,細胞内浮遊菌ではc-di-GMP濃度は,他の株とそれ程変わらないものの,psl遺伝子の発現量が低かった。この事から,付着時に誘導されるpsl遺伝子の発現が,上昇していないことが推測された。今後はこれらの株について,付着時のpsl遺伝子の発現量の変動やc-di-GMP濃度の変化,また全ゲノムシークエンスの解析を行い,psl遺伝子とその上流,またc-di-GMP合成,分解遺伝子の変異などについて解析を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
付着菌での抗菌薬抵抗性が低下している臨床分離株を見出すことが出来たため,これらの株の遺伝子発現等の解析を進めていくことが抗菌薬抵抗性メカニズムの解明に繋がると期待されるため。
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次年度使用額の使用計画 |
繰越額と合わせた平成29年度の直接経費は,リアルタイムPCR等の遺伝子発現の解析,分子生物学実験用試薬類,細菌培養用実験の消耗品等を購入する。また,研究成果発表のための学会等への出張旅費に使用する。
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