研究課題/領域番号 |
26462789
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
内藤 真理子 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 准教授 (20244072)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 口腔細菌学 / 歯周病原菌 / 病原因子 / 遺伝子操作 / 鉄獲得 |
研究実績の概要 |
ヘム鉄獲得にはまずヘム蛋白質であるヘモグロビンの分解によるヘム鉄の遊離が必須である。Prevotella intermediaの全遺伝子検索からは蛋白質分解酵素が多数検出された。その中から大腸菌で作成したリコンビナント蛋白質を用いた実験からinterpain A(inpA)にヘモグロビン分解活性が報告されている。そこでまずヘム分解酵素の候補としてinpA 遺伝子の変異株作成を行った。inpA遺伝子と上下流領域を含む断片を PCRにて増幅する。その後inpA 遺伝子の領域を Bacteroides 由来の エリスロマイシン耐性遺伝子ermFに置き換えて、inpA 遺伝子変異株作成用のtargeting constructを作成する。このコンストラクトを Bacteroides-大腸菌のshuttle plasmidから作成したスクロース存在下でplasmidが脱落する pTCB-sacB に挿入する。このプラスミドを大腸菌株 S17-1 に形質転換後、Pre. intermedia遺伝子操作可能株に共培養により接合伝達させる。得られた形質転換株からinpA遺伝子ermFに置き変わった変異株をスクロース存在下で選択、inpA変異株を得た。得られた変異株を用いてinpAの活性を10mM Boc-Val-Lue-Lys-MCAを基質に用いて王や株と比較したところ、変異株では完全に活性が失われたいた。一方血液寒天上での集落の観察からinpA変異株でも黒色色素産生性が維持されていることが明らかになった。そこで当初の計画に沿って電気泳動により膜蛋白画分から親株に存在、Por分泌機構変異株で存在しない蛋白スポットを探索した。結果inpAと同じくT9SS分泌シグナル(CTD domain motif)保有、family C10に属する分解酵素遺伝子を候補蛋白質として選んだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画に沿って、Prevotella intermediaからヘモグロビンの分解の候補蛋白質分解酵素であるinterpain A遺伝子の変異株の作成に成功した。また得られた変異株の性状解析を行うことにより、inpAリコンビナント蛋白質で特異基質を用いて示されていた蛋白質分解活性がinpA変異株で完全に失われていることを明らかにできた。また本菌の黒色色素産生性にはinpA変異だけでは影響がないことも明らかにした。今後の解析のための他のヘモグロビンの分解の候補蛋白質分解酵素の選出も行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
Prevotella intermediaの全遺伝子のモチーフ検索から、68個の遺伝子がタンパク分解酵素特有なアミノ酸ドメイン配列を持つことをこれまでに明らかにしている。そこで昨年度の実験で選び出したヘモグロビン分解酵素の候補遺伝子に加えてこれらの中からも候補遺伝子を検索する。Por分泌システムの変異株では、黒色色素産生性がなくなることから候補となるのはPor分泌システムで輸送される蛋白質と予測した。そこでPor分泌システム輸送蛋白質に共通なモチーフ(CTD domain motif)とN末端の分泌シグナル配列を持つものを選び出す。選び出した候補遺伝子、それぞれの変異株を作成、それぞれの遺伝子の黒色色素産生性への影響を検討する。また候補遺伝子のリコンビナント蛋白質を大腸菌にて発現、精製を行う。得られたリコンビナント蛋白質を用いてヘモグロビン分解活性やヘム鉄結合性をその結合条件(pH,酸化還元状態)を含めて調べる。これまでに本菌自身を用いたヘモグロビン分解活性については幅広いpH条件で活性が存在するが、最も高い活性が認められるのはpH5付近と報告されている(Guan SM et.al. Anaerobe,2006)。そこでリコンビナント蛋白の活性測定には弱酸性である pH5 付近から中性域のバッファーを用いて実験を行う。これにより本菌のヘム鉄獲得に関わる分子を決定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
試薬を購入して実験を実施する予定だったが、実験の進行状況から当該試薬を使用する実験が次年度の実施になったため。
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次年度使用額の使用計画 |
繰り越した研究費で当初の計画していた実験を行うための試薬を購入する。
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