ヘム鉄獲得にはまずヘム蛋白質であるヘモグロビンの分解によるヘム鉄の遊離が必須である。Prevotella intermediaの全遺伝子検索からは蛋白質分解酵素が多数検出された。また本菌が含まれるBacteroides属で見いだされたPor分泌機構すなわちType 9分泌機構(T9SS)がヘム鉄の遊離とその輸送と活性発現に必須であることが示唆されていた。これまでの研究でタンパク質分解酵素interpain A (inpA)がヘム鉄の遊離にはたらくことが予測されていた。昨年までの研究で我々が本研究で確立した変異株作成方法により本菌の黒色色素産生性にはT9SSが必須であること、さらにinpA遺伝子が責任遺伝子ではないことを明らかにした。本年度はT9SS依存性に輸送分泌されると予測されるT9SS分泌シグナルを保有する他のタンパク質分解酵素の遺伝子5つの詳細な解析を行った。M6ファミリーに属する遺伝子(1個)の変異株を作製することはできなかった。作成できた4種の遺伝子の変異株(C10ファミリー遺伝子2個、S8ファミリー遺伝子2個)を解析したところ、S8ファミリー遺伝子の一つの変異株で黒色色素産生性が失われていた。この遺伝子の変異株は当初、一個だけしか取得できなかったので、目的遺伝子以外に変異が生じている可能性を排除できなかった。そこで再度変異株作成を行い、新たに8株を得て黒色色素産生性が失われていること、標的遺伝子の周囲のゲノム配列には変異がないことを確認した。またこの遺伝子とC10ファミリーの遺伝子1つではバイオフィルム形成能が著しく低下していた。これらの結果から本菌のT9SSはヘム鉄獲得だけでなくバイオフィルム形成にも重要なタンパク質の輸送分泌に働くことで、本菌の病原性に重要な働きを持つことを明らかにした。(本成果の論文を作成中)
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