研究課題
平成28年度は平成27年度に、象牙芽細胞が侵害刺激を歯髄内の知覚神経に伝達するのにATPが使われ、さらにそのATPの象牙芽細胞の放出に、小胞型トランスポーターvesicular Nucleotide Transporter (VNUT)が関与していることが示されたので、研究を発展させて、象牙芽細胞の刺激が伝わる知覚神経の神経細胞体のある三叉神経節においてVNUTやATPがどのように関わっているかを調べた。当初、象牙芽細胞のような非神経細胞から神経細胞への情報伝達にVNUTを介してATPが使われると予想して三叉神経節の組織を調べたところ、三叉神経節の神経細胞周囲の衛星細胞のみならず神経細胞自体にも強いVNUTの免疫陽性反応が認められた。このVNUTの発現は、特に侵害刺激を受けていないコントロール群でも認められ、三叉神経節の神経細胞、衛星細胞にも恒常的に発現していることが確認された。また、侵害刺激を受けると神経細胞ならびに周囲の衛星細胞におけるVNUT陽性小胞数増加も認められた。さらに、ATPの受容体であるP2X受容体の発現も、タイプは細胞によって違うが、神経細胞、衛星細胞、さらにはその周囲のマクロファージ様細胞にも認められた。抜歯や神経結紮後の三叉神経節内におけるマクロファージ様細胞の数の増加や形態的な活性化が認められたことは、侵害刺激を受けた神経細胞から衛星細胞を介してATPなどの伝達物質が放出され、侵害刺激を受けた神経細胞だけでなく周囲の神経細胞や他の細胞にも影響が及んでいることが示唆された。
象牙芽細胞から神経細胞への疼痛シグナルの伝達にATPが関わっているのではという報告はありましたが、本研究では象牙芽細胞が刺激を受けるとvesicular neucleotide tranporter (VNUT)の働きにより、ATPが小胞分泌され、それが近傍の知覚神経週末のATP受容体に結合することにより疼痛シグナルが伝わる事を示しました。
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