研究課題/領域番号 |
26462793
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研究機関 | 北海道医療大学 |
研究代表者 |
中澤 太 北海道医療大学, 歯学部, 教授 (60115053)
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研究分担者 |
宮川 博史 北海道医療大学, 歯学部, 講師 (30219729)
藤田 真理 北海道医療大学, 歯学部, 助教 (50405669)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | Oral biofilm / Oral Veillonella / V. tobetsuensis, / periodontitis / ドラフトゲノムシークエンス |
研究実績の概要 |
バイオフィルムの初期形成に関する本研究の遂行によって、これまでに以下の内容を明らかにした。 1)金属チタン表面への口腔細菌の初期付着は、ラクトフェリンのコーティングによって阻止される。2)ナタ豆からのアルコール抽出液には、バイオフィルム形成抑制効果があり、マウスを用いた歯周病誘発in vivo実験においても、口腔バイオフィルム量の減少のみならず、歯槽骨吸収の抑制が認められた。3)歯周病の原因細菌の1つであるPorphyromonas gigivalisのバイオフィルム形成には、近縁のPrevotella orisとの共凝集が重要な役割を担っている。4)重篤な歯周病の歯周ポケットは、軽度の歯周ポケットに比較してVeillonella parvulaの分布と出現頻度が高いことから、歯周病の進行へのV. parvulaの関与が示唆された。5)Veillonella tobetsuensisが共存した場合、Streptococcus属のバイオフィルム形成が最も促進された。6)デンタルユニットの水パイプライン中のバイオフィルムの除去に、poseidonシステムによって作成される電解水が極めて有効である。7)Veillonella tobetsuensisが培地中に産生するautoincucer-2様の物質が、Streptococcusによるバイオフィルム形成を抑制した。8)Veillonella tobetsuensisのドラフトゲノムシークエンスを明らかにした。9)ハイビスカスの花弁からのアルコール抽出物が、複数の口腔細菌によるバイオフィルム形成を抑制した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでの研究成果に基づき、以下の研究を遂行中である。1)StreptococcusとVeillonellaが形成するバイオフィルムについて:健常者の口腔において最も分離頻度が高いStreptococcus属細菌種はS. salivariusで、Veillonella属細菌種としては、V. rogosaeである。また、S. salivariusはショ糖を基質として水溶性フルクタン(多糖体の1種)を産生することが知られている。そこで、この2菌種によるバイオフィルム形成機序を明らかにするために、添加するショ糖や2菌種を共培養する時期と量比を変化させ、バイオフィルム形成量や浮遊菌量、更に水溶性フルクタンの産生量を経時的に測定する。2)Veillonella属の新菌種の確立について:これまでの臨床試料を用いた研究過程で、Veillonella属特異的プラーマーでは典型的なPCR産物を作るが、既報のVeillonella属細菌種に特異的なプライマーを用いたPCRでは産物を示さない菌株を複数分離している。これらはVeillonella属の新菌種と推定されることから、16S rRNA, rpoB, dnaK等のシークエンス解析の他、細胞壁の脂肪酸構成や生化学的性状を明らかにし、新菌種として確立する。3)タイの学童の口腔細菌叢について(Mahidol大学との国際共同研究):タイの学童から舌垢及び唾液を採取した試料を用い、それらから分離されるVeillonellaを菌種レベルで同定し、各菌種の分布と出現頻度を明らかにする。
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今後の研究の推進方策 |
1.食文化などによる口腔細菌叢の違い:1)日本の学童から舌垢及び唾液を採取し、それらから分離されるVeillonellaを菌種レベルで同定し、各菌種の分布と出現頻度を明らかにする。2)その結果と上記3)の結果を比較検討し、食文化等によるVeillonella属細菌種の分布と出現頻度を明らかにする。 2.唾液試料のメタゲノム解析:1)タイの学童から採取した唾液試料中のメタゲノム解析を行う。2)日本の学童からも唾液を採取して、同様にメタゲノム解析を行う。3)日本とタイの学童の唾液のメタゲノム解析を比較検討し、食文化などによる学童の細菌叢の違いを解析する。 3.口腔清掃状態と細菌叢:それぞれの国の採取した学童を、口腔清掃状態によって、良い群、中程度群、悪い群の3群に分類する。上記1.及び2.の結果を、口腔清掃状態の違いによる3群毎に詳細に解析し、日本およびタイの学童における口腔清掃状態と1)Veillonella属細菌種の分布や出現頻度との関連性、2)全細菌叢との関連性、を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
メタゲノムの依頼解析が終了せず、支払が遅れたため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度にメタゲノムの依頼解析が終了するので、支払う予定。
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