研究課題/領域番号 |
26462794
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
大津 圭史 岩手医科大学, 歯学部, 講師 (60509066)
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研究分担者 |
藤原 尚樹 岩手医科大学, 歯学部, 准教授 (20190100)
熊上 深香 (坂野深香) 岩手医科大学, 歯学部, 研究員 (30710826)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 歯 / エナメル芽細胞 / 低酸素 / Rhoシグナリング / 血管 |
研究実績の概要 |
歯胚発生の初期では上皮組織であるエナメル器には血管が存在しない。しかし、エナメル芽細胞が基質分泌を開始する時期になると周囲組織から星状網へ血管が侵入して、エナメル芽細胞と密接な位置関係をとるようになる。しかしこの上皮と血管の接近が、どのような生理的役割を持っているのかは明確でない。以前われわれはRhoシグナルが、エナメル芽細胞分化を制御していることを見いだした。そこで本研究では、血管の走行変化によって引き起こされる部位特異的な組織内酸素濃度変化がRho シグナリングを介してエナメル芽細胞分化を制御すると考え研究を行った。まず、血管がGFPを発現するFLK1-GFPを用いてマウス切歯における血管の走行を組織学的に調べたところ、分化したエナメル芽細胞(分泌期エナメル芽細胞)に比べ、エナメル上皮幹細胞と血管の距離がより離れていることから、エナメル上皮幹細胞が相対的に低酸素環境下にあると考えられた。そこで、培養エナメル上皮細胞を低酸素環境で培養すると、エナメル上皮幹細胞マーカーSox2の発現とRhoAの活性が上昇した。さらにSox2をノックダウンするとRhoAの活性が抑制されたことから、エナメル上皮幹細胞は低酸素環境下においてSox2-RhoAシグナルを介して維持されていることが示唆された。また、高酸素環境下のエネルギー代謝経路である酸化的リン酸化のマーカーの発現をマウス切歯で組織学的に比較したところ、分泌期エナメル芽細胞で発現がより強いことから、エナメル上皮幹細胞は解糖系優位、分泌期エナメル芽細胞のは酸化的リン酸化優位のエネルギー代謝状態になっていること推測された。以上の結果から、血管走行によって規定される組織内酸素濃度は、Sox2-RhoAシグナルや細胞内エネルギー代謝を介してエナメル上皮細胞分化をコントロールしていると考えられた。
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