本研究の目的は、血管の走行にともなって変化する組織内酸素濃度がどのようにエナメル芽細胞分化を制御しているのかを明らかにすることである。トランスジェニックマウスやエナメル上皮細胞株を使った実験から、未分化なエナメル上皮細胞は分化したエナメル芽細胞にくらべより低酸素環境にあり解糖系優位のエネルギー代謝状態であること、さらに幹細胞マーカーの発現とRhoAの活性は酸素濃度依存性であることがわかった。これらの結果より、血管走行によって規定される組織内酸素濃度は、RhoAシグナルや細胞内エネルギー代謝の制御を介してエナメル芽細胞分化をコントロールしていると考えられた。
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