研究課題
本研究は、歯肉付着上皮の防御機構を再検討し、付着上皮の破壊と再生のメカニズムを解明するために、付着上皮の歯面側最表層細胞(DAT細胞)と、付着上皮細胞間隙にネットワークを構築しているLangerhans細胞および末梢神経線維網に焦点を当てて見直すことを目的としている。 研究項目としては、ラット歯周組織を用い、免疫蛍光染色・免疫電顕法、ディープエッチング・フラクチャーレプリカ法による観察を行う共に、蛍光色素トレーサ実験などを行っている。本年度は、成熟した二次性上皮付着の成立過程を解析する中で、セメント質表層近くの歯根膜中に局在し、網目状のネットワークを形成しているMarassesの上皮遺残細胞と、CEJ部で付着上皮先端部を構成しているDAT細胞とが、上皮先端から数層歯冠側寄りの結合織側で、細い上皮索となって一部で連絡している可能性があるデータを得ている。
3: やや遅れている
本年度の研究進捗状況としては、成獣ラットにおける二次付着上皮の免疫染色および凍結割断レプリカを含む透過電顕データを検討しているところで、出生後の幼若SD系雄ラットにおける退縮エナメル上皮から一次付着上皮を経て、二次付着上皮への変化を検証するだけのデータは得られていない。しかしながら、歯根膜内に存在するMalassez 上皮遺残細胞と、CEJ部で付着上皮先端部を構成しているDAT細胞との直接的な関連が示唆されたことから、Malassez 上皮遺残細胞を含む付着上皮と、そこに介在するLangerhans細胞及び末梢神経線維のネットワークを立体的に捉える必要がある、と考えて免疫蛍光および免疫組織化学的な試行をおこなっている。
基本的な研究計画については、現在行なっている免疫蛍光染色、免疫電顕およびフリーズフラクチャーレプリカ電顕による観察については大きな変更点はないが、加えて蛍光色素で標識した顎骨から歯根膜と付着上皮とを含む領域をガラスボトムのチャンバー内で、蛍光トレーサー実験を加えて、共焦点レーザー顕微鏡観察によって解析する実験系を進める。歯肉の移植実験系については、実験手技的な問題から再検討が必要であると思われる。
年度末に購入した試薬が、当初の見積額よりも納入時により安価に入手できたため、最終的に差額が生じた。
染色条件が決まってきたため、本年度はラットの使用数が増加すると共に、論文作成、研究会での発表旅費に使用する必要がある。
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Journal of Japanese Society for Evidence and the Dental Professional
巻: Vol. 8 (1) ページ: 22-28