研究課題/領域番号 |
26462802
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研究機関 | 鶴見大学 |
研究代表者 |
山田 浩之 鶴見大学, 歯学部, 講師 (90267542)
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研究分担者 |
斎藤 一郎 鶴見大学, 歯学部, 教授 (60147634)
濱田 良樹 鶴見大学, 歯学部, 教授 (70247336)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 唾液分泌障害 / 消化管機能 |
研究実績の概要 |
目的:平成26年度は唾液分泌障害マウスを作出して、このマウスの経時的な消化管の形態的変化を観察した。放射線照射による唾液分泌障害マウスと比較する目的で唾液腺を摘出したモデルで検討を行った。 方法:1.唾液分泌障害マウスの作出:Specific pathogen-free室にて飼育したC57BL6J(6週齢オス)マウスにpentobarbital (50 mg/kg)を静脈内投与し、大唾液腺を摘出し、唾液分泌減少マウスを作出した。2.消化管組織の病理組織学的評価:唾液分泌障害マウスの消化管を口腔、食道、胃、小腸、大腸に分けて摘出し、粘膜上皮やパイエル板の形態学的変化をコントロールのマウスと比較した。 結果:大唾液腺全摘出マウスの唾液量はコントロールマウスと比較して有意に減少したが、 体重に明らかな差異はなかった。舌の組織学検討では唾液分泌減少マウスの舌乳頭の萎縮が観察された。唾液分泌減少マウスでは食道や胃粘膜の厚さが薄い傾向が認められた。また、空腸では腸絨毛の長さが短い傾向が認められたが、大腸粘膜に明らかな差異は認められなかった。 結論:唾液腺摘出モデルでは、明らかな唾液分泌量の減少が認められ、口腔のみならず消化管粘膜の形態学的変化が観察された。唾液中の生理活性因子が消化管粘膜の恒常性維持に関与している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成26年度に作出予定であった放射線照射による唾液分泌減少マウスの作出の前に唾液分泌摘出モデルでの検討を行った。放射線照射により唾液分泌量が十分低下するのには、約2ヶ月ほど時間を要する。さらに唾液分泌量減少が消化管に与える影響が出現するには約3ヶ月を要するため、唾液量減少の効果がすぐに現れる唾液腺摘出モデルでの検討を先行させた。また、空腸や回腸では部位による正常な解剖学的構造の違いがあるため、消化管の採取部位を統一するために数回の病理組織学的検討を要した。
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今後の研究の推進方策 |
1.唾液腺摘出モデルでは、唾液分泌減少により消化管粘膜が萎縮する傾向が認められたが、さらにマウスの匹数を増やして、この結果を再検証する。 2.Specific pathogen-free室にて飼育したC57BL6J(6週齢オス)マウスにpentobarbital (50 mg/kg)を静脈内投与し、リニアック(Toshiba Medical System, Tokyo) を用いて10 MVのX線を15 Gy顎下腺局所に照射し、放射線照射モデルでの検討を行う。 3.上皮の形態だけでなく、抗CD31抗体を用いた免疫組織化学染色により消化管粘膜の血管密度を測定し、経時的に観察する。 4.作出した放射線照射による唾液分泌障害マウスに対する治療実験を行う。歯髄細胞、マウス血管内皮細胞および骨髄由来細胞の細胞移入群を設定し、消化管粘膜の病理組織学的な経時的変化を観察する。歯髄細胞の生着は、GFP陽性細胞をC57BL6Jマウスから検出することにより確認できる。また、GFP陽性細胞の挙動を追跡して消化管粘膜への関与を調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
放射線照射による唾液分泌障害のモデルマウスが作出されず、このマウスを用いた検討が行われなかったことが主原因と考えられる。また、消化管組織の病理組織学的な経時的変化を観察したが、HE染色標本のみの検討しか行われておらず、抗CD31抗体を用いた免疫染色に必要な費用が算定されなかったため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
唾液分泌障害のモデルマウス作出のためのマウスや唾液分泌量測定に用いる器具・器材等の消耗品が必要となる。GFPマウスから歯髄細胞や骨髄由来細胞を採取する実験では、細胞培養関連器具や病理組織学的検討に用いる標本作製に関わる試薬等の消耗品が必要となる。加えて、本研究に関連する情報を収集するため、学会に出席する予定である。
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