目的:平成28年度は前年度と同様に唾液分泌障害マウスを作出して、このマウスの経時的な消化管の形態的変化を観察した。放射線照射による唾液分泌障害マウスと比較する目的で唾液腺を摘出したモデルで検討を行った。方法:1.唾液分泌障害マウスの作出:Specific pathogen-free室にて飼育したC57BL6J(6週齢オス)マウスにpentobarbital (50 mg/kg)を静脈内投与し、大唾液腺を摘出し、唾液分泌減少マウスを作出した。2.消化管組織の病理組織学的評価:唾液分泌障害マウスの消化管を口腔、食道、胃、小腸、大腸に分けて摘出し、粘膜上皮やパイエル板の形態学的変化をコントロールのマウスと比較した。空腸や回腸では部位による正常な解剖学的構造の違いがあるため、消化管の採取部位を統一した。結果:大唾液腺全摘出マウスの唾液量はコントロールマウスと比較して有意に減少したが、体重に明らかな差異はなかった。舌の組織学検討では唾液分泌減少マウスの舌乳頭の萎縮が観察された。唾液分泌減少マウスでは食道や胃粘膜の厚さが薄い傾向が認められた。また、空腸では腸絨毛の長さが短い傾向が認められたが、大腸粘膜に明らかな差異は認められなかった。結論:唾液腺摘出モデルでは、明らかな唾液分泌量の減少が認められ、口腔のみならず消化管粘膜の形態学的変化が観察された。唾液中の生理活性因子が消化管粘膜の恒常性維持に関与している可能性が示唆された。
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