研究課題/領域番号 |
26462804
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研究機関 | 愛知学院大学 |
研究代表者 |
吉田 康夫 愛知学院大学, 歯学部, 准教授 (10315096)
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研究分担者 |
吉村 文信 愛知学院大学, 歯学部, 教授 (50001962)
石原 裕一 松本歯科大学, 歯学部, 教授 (50261011)
毛塚 雄一郎 岩手医科大学, 薬学部, 助教 (50397163)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 短鎖脂肪酸 / Porphyromonas gingivalis / 酪酸 |
研究実績の概要 |
Porphyromonas gingivalisは多量の短鎖脂肪酸を培養上清中に放出することが報告されている。短鎖脂肪酸の一種である酪酸は口腔組織へ為害作用があることが知られている。重度の歯周病患者の歯周ポケットでは、酪酸の歯肉溝内の濃度が健常人の10倍程度増加しており、歯周病のマーカーとしても臨床的に有用であることが示唆されている。しかし、同菌の酪酸の産生機構についての分子生物学的な解明は未だ十分になされていない。本年度の研究では、P. gingivalisの酪酸産生機構に関与する分子(Pgn_0723)に着眼し、その分子生物学的な解明を試みた。 P. gingivalis ATCC 33277株においてsuccinyl-CoAからsuccinate semialdehydeを産生すると予測されているPgn_0723タンパク質をコードしている遺伝子に、エリスロマイシン耐性遺伝子を挿入して不活化した。それらの株の培養上清の短鎖脂肪酸の量をGC/MSにて定量した。また、pGEX6p-1ベクターを用いて組換えタンパク質を精製して、succinyl-CoAとNADHを基質として、その産生産物をLC-M/MSで定性し、NADHの消費を比色法を用いて酵素学的パラメーターを決定した。さらに、Propionyl semialdehyde dehydrogenase (Protein code 4C3S)を鋳型に立体構造のモデルを作製した。 Pgn_0723遺伝子の不活化株の培養上清中において、酪酸のみならず、イソ酪酸およびイソ吉草酸も野生株と比較して有意に低下していたが、プロピオン酸の産生は野生株とほぼ同等であった。Pgn_0723に基質としてsuccinyl-CoAを加えたところ、NADHの消費とsuccinate semialdehydeおよびCoAの産生を認めた。Pgn_0723と4C3Sの比較から、Thr405からGly415の範囲で立体構造が大きく異なることが示唆され、同領域が基質であるsuccinyl-CoAの結合部位であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年他予算でGC-MSを購入し、研究が滞りなく進んだ。昨年に引き続き、短鎖脂肪酸の合成遺伝子群についての解析を進め、その機能を詳細に明らかにすることができた。現在まで、PGN_0723およびPGN_0724の解析を進め、その機能について明らかにし、論文発表も行った。また、酪酸産生に関与するCo-A transferaseについても新規知見を得ており、研究の展開は順調である。
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今後の研究の推進方策 |
現在、酪酸やプロピオン酸の合成機構の最終段階に関与するCo-A transuferaseの生物学的、酵素学的解析を進めている。今後、さらに短鎖脂肪酸合成機構の解明を、分子生物学レベルで進めるとともに、臨床を応用を目指した、短鎖脂肪酸マーカーの探索を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
GC-MSを使用する実験において、消耗品であるカラムを使用する実験を行う時期が、ずれてしまい、購入しなかったから。
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次年度使用額の使用計画 |
昨年度、実験できなかったGC-MSを使った実験を行うため、カラムおよび消耗品を購入する予定である。
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