研究課題/領域番号 |
26462806
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
岡本 成史 金沢大学, 保健学系, 教授 (50311759)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | インフルエンザウイルス / 口腔レンサ球菌 / 混合感染 |
研究実績の概要 |
昨年度は、マウスモデルを用いて、インフルエンザウイルスと口腔レンサ球菌であるStreptococcus mutans, S. sanguinis, S. salivariusとの混合感染による感染症憎悪の有無について検討した。その結果、非致死量のインフルエンザウイルスを経鼻感染させ、その3日後にS.mutansもしくはS.sanguinis を経鼻感染させることにより、体重減少の有意な憎悪が認められ、マウスの衰弱現象が認められた。また、これらのマウスの肺から両病原体が検出されたことから、感染性の肺炎を発症していることが示唆された。しかし、マウスの死亡までには至らなかった。一方、コントロールであるインフルエンザウイルスとS. pyogenes との混合感染においては、80%以上のマウスが死亡していた。 インフルエンザウイルスと口腔レンサ球菌との混合感染においても感染症の憎悪の可能性を示唆したものの、致死的感染には至っていないため、現在致死的感染症に至る感染条件を模索中である。また、インフルエンザウイルスにも株によって強毒株と弱毒株が存在しており、株の違いによる感染症の憎悪の違いも考えられるため、ウイルス株を変えた場合での現象の相違についても検討を進める必要があるように思われる。 今年度は、上記内容に加え、混合感染による病態変化を検討し、どの臓器においてどのような病態変化が生じているのかを検討する。また、その病態変化に至る微生物側および宿主側の因子を検索するために、病態変化を示す臓器および、そこに生息する微生物の性状変化について遺伝学的手法を用いて検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度は、マウスでのインフルエンザウイルスと口腔レンサ球菌との混合感染による致死的感染症のモデルの作製と、その病理学的特徴について検討を行う予定であった。モデルについては進展をみせており、完全なモデルの作製には至ってはいないものの、次年度までにはモデルが完成し、それらの病理学的特徴を検討することが可能である。以上より、当初の計画の方向で研究が進行していると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、インフルエンザウイルスと口腔レンサ球菌の混合感染による致死的感染症発症の可能性について引き続き検討をすすめる。具体的には、①ウイルスと細菌の感染のタイミングについて詳細な検討を行う。②インフルエンザウイルスの株を変更することにより、致死的感染症の発症が誘導しやすくなるか否かを検討する。 その結果、致死的感染症の誘導が認められた場合、その病態を詳細に解析する。具体的には①各臓器における病原体の集積分布、②最も多くの病原体が認められた臓器、組織における病理学的変化の検討、③②において、その臓器における炎症の特徴についてゲノミクス的手法を用いて検討する。④その結果、病態発現に関連すると思われる細菌側の病原因子の候補を列挙し、それらの因子を欠失させた菌株を作製した上で、混合感染での致死的感染症の発症の抑制が認められるか否かを明らかにする。 もし、致死的感染症の誘導が見られない場合についても、上記の方法と同様の解析を行う。しかし、その際、インフルエンザウイルスとS. pyogenes との混合感染のコントロールとの比較を徹底的に精査する。その上で、S. pyogenes に強発現し、口腔レンサ球菌には弱発現ないし発現しない病原因子を列挙し、その中から、病態変化の違いから関連性があると考えられる側の病原因子を選び出す。その上で、その病原因子を発現させた場合の混合感染による致死的感染症の誘導の可能性について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度はおおむね計画通りに進行したが、年度末に行うべき研究課題の一部に計画の再検討・変更の必要が生じ、予定を翌年度に持ち越すことになった。そのため、その分に使用する消耗物品の購入を翌年度購入に繰り越したため、次年度使用額が生ずることとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額分については、上記のとおり、当該年度に予定されていた研究課題の計画修正版に関する消耗物品費用として使用する。
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