我々は平成27年度までにインフルエンザウイルスとStreptococcus sanguinis との並行感染によって、感染症が重症化することをマウスモデルにより明らかにした。また、肺での細菌数の増加すること、その増加が肺胞上皮細胞への付着増強によることを見出した。 平成28年度は、インフルエンザウイルス感染によって肺胞上皮細胞がどのようなメカニズムによってS. sanguinis への付着能を増強させるかについて検討を行った。 まず、インフルエンザウイルス感染によって肺胞上皮細胞上にgp96タンパクの発現が上昇することを明らかにした。このタンパクは、ナイセリア属菌などの上皮細胞への付着能の増強に関与することが報告されていることから、我々はgp96タンパクの細菌付着への可能性を検討するべく、インフルエンザウイルス感染後にgp96インヒビターを添加することによって肺胞上皮細胞上のgp96発現を抑制させた上で、S. sanguinis の付着能の変化を観察したところ、付着能がほぼ完全に抑制することを確認した。さらに、gp96タンパクに結合するS. sanguinis 表層タンパクの検索をプルダウン法を用いて検討したところ、数本のタンパクが結合すること、それらの大多数がABCトランスポーターであることを見出した。 現在、該当するトランスポーターとgp96との結合によってインフルエンザウイルス感染後のS. sanguinis の付着侵入さらには、並行感染による感染症の病態憎悪に関する詳細な解析を進めている。
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