研究課題/領域番号 |
26462809
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中村 渉 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 准教授 (60372257)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 概日リズム / 体内時計 / 視交叉上核 / 社会的時差ボケ |
研究実績の概要 |
「社会的時差ボケ」は体内時計の生理的時間と、社会スケジュールの時間が乖離することで生じる。マウス輪回し行動リズム測定を用いた実験により、1週間サイクルのうち、2日間昼夜を模した光に暴露される時間帯を3時間シフトさせる光環境プロトコール下に暴露することにより、消灯時刻(スケジュール上の活動開始時刻)と実際の活動開始時刻(生理的時刻)に乖離が生じることを見出した。この実験環境プロトコールの結果は休日(Free day)明け初日(月曜日)の時差ボケが最大となる「ブルーマンデー」の兆候を示した。さらに慢性的時差ボケプロファイルに作用する主要因子(夜更し・朝寝坊・その変位時間・日数の割り振り)を分析し、体内時計中枢・視床下部視交叉上核の概日リズム変位動態を明らかにした。視交叉上核の動態は、行動測定記録のリズム変位から予測がつくことであり、実際、今年度作成した15分間光パルスに対する輪回し行動リズムの位相反応曲線は、視交叉上核に生じた位相変位を鋭敏に再現したものであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画通り、マウス個体行動レベルの測定記録を終え、実験条件の最適化を済ませた。今後2年度に及ぶ研究計画遂行の基盤として十分な成果といえる。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に確立した「社会的時差ボケ」環境条件プロトコールを用い、育成環境の撹乱が体内時計回路に引き起こす神経可塑性について検討する。神経可塑性は発生発達期の環境因子に依存する。「三つ子の魂百までも」が体内時計にも該当するかを検証する。対照群は光環境12時間明期/12時間暗期の規則正しい飼育環境で交配→妊娠→出産→離乳を経過した雄マウスを用い、実験群は妊娠の成立直後から3週間の胎仔期を社会的時差ボケ条件下で経過し、さらに出生後3週間までの哺育期を同じく社会的時差ボケ条件下で経過した雄マウスを用いる。体内時計機能の可塑性は離乳後より輪回し行動測定系に移し個体行動リズムの機能スクリーニングを行い評価する。また、機能的可塑性が確認された場合、胎仔期(発生期)のみに環境リズム撹乱を付与した条件と、出生後哺育期(発達期)のみ同条件下に置いた場合について個体行動リズム機能を評価する。さらに加齢における光環境の影響を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画の早期遂行を優先させたため、旅費を計上していた学会の参加を見合わせた。その分、研究補助員の技術指導を行うことができ、次年度以降の研究進展が期待できる。
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次年度使用額の使用計画 |
研究補助員の雇用時間(謝金)が増加することが予想されるため、繰り越し分は謝金に充てる。
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