研究課題/領域番号 |
26462809
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中村 渉 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 准教授 (60372257)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 概日リズム / 体内時計 / 視交叉上核 / 社会的時差ボケ |
研究実績の概要 |
平日(月・火・水・木・金)と週末(土・日)をシミュレートした1週間光環境サイクル、いわゆる「社会的時差ボケ」スケジュールは、middle-aged期における雌マウスに、性周期不整を引き起こすことを発見した(Takasu et al. Cell Rep. 2015)。雌性生殖機能は加齢と共に減退し、閉経を迎えるまでの移行期には性周期の不整や消失を伴う。概日リズム機能もまた加齢の影響から逃れることはできず、middle-aged期にはすでに自由継続周期の変化、リズム位相の不整、視交叉上核神経出力の減弱がみとめられる。時計遺伝子Cry KOマウスは、自由継続周期に変調をきたしCry1 KOは概日周期の短縮を、Cry2 KOは概日周期の延長を呈するが、24時間周期の明暗サイクルに同調し、野生型と同等の繁殖が可能である。社会的時差ボケ環境下で性周期不整を示す野生型雌性マウスに対し、Cry KO雌性マウスは、本来、妊娠・出産可能な8~12ヶ月齢期に早期性周期不整を伴う不妊を呈することをみいだした。Middle-aged Cry1, 2 KO マウスに生じる性周期不整と早期不妊は、環境明暗サイクルをマウス遺伝型固有の周期に調整することで劇的に改善された。さらに、社会的時差ボケ時における視床下部・視交叉上核の発光レポーターリズム ex vivo記録系により、概日リズム中枢の1週間位相変位動態を記録し、生理機能不全が視交叉上核リズム出力の位相変位に起因するものであるとの結論を得た。 以上の結果は、サーカディアンペースメーカーの環境リズムと生理機能タイミングとの調和をはかる重要性、すなわち「生物時計活用戦略」を明示する。また、生殖機能の早期減退が概日リズム機能の加齢変調によって生じるリスクと共に、環境の最適化により早期不妊症を回避できる「サーカディアン戦略」を示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「社会的時差ボケ」と加齢による生殖機能減弱の因果関係は、当初H27年度研究計画にはなかったが、慢性的時差ボケに作用する主要因子の検討が済んでいたため、厳密な結論を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、「社会的時差ボケ」環境光スケジュールを用い、育成環境の撹乱が生理機能リズム制御神経回路に引き起こす神経可塑性について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
論文公表後の成果報告のため、旅費の比重が増した。前年度未使用分にて、ほぼ計画使用額と同等になった。
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次年度使用額の使用計画 |
未使用分は研究補助員の謝金に充て、研究の更なる進展をはかる。
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