「ブルーマンデー」は就学期おいて深刻な問題であり、社会的不適応の一因となり得る。生理機能や行動の概日リズムを制御する体内時計中枢は、視床下部・視交叉上核に存在する。視交叉上核は自律的に約24時間(概日)のリズムを刻み、環境光の変化を入力することで、概日リズムを24時間周期に調整している。 本研究では、「ブルーマンデー」の成因・機序を解明するため、光環境を操作し“社会的時差ボケ”モデルマウスを作製した。12時間毎に点灯/消灯する24時間周期の明暗環境条件下でマウス輪回し行動を記録すると、毎日消灯時刻に輪回しを開始する正確な日内行動リズムを示す。その後、5日間を8時/20時の明暗サイクルに設定し、2日間を11時/23時の明暗サイクルにシフトさせる“週間”サイクル条件に移行した。同条件下での視交叉上核リズム出力動態を明らかにするため視交叉上核にワイヤー電極を挿入し、自由行動下における神経活動記録を行った。 視交叉上核の神経活動は明期に高発火頻度/暗期に低発火頻度を示す明瞭な日内リズムを示した。定常の昼:高/夜:低の神経活動は、消灯時刻の3時間遅延時に高発火頻度を維持し、リズム位相の後退を示した。輪回し行動の開始は消灯時刻を20時に戻した3~4日後に再び消灯時刻と一致し、行動リズムの動態と視交叉上核リズムは一致していた。また、明期の3時間延長と、暗期の延長とを比較すると、明期の延長は視交叉上核リズムの位相後退を引き起こすのに対して、暗期の延長は位相変位を示さなかった。 以上より、本実験でシミュレートした週間明暗環境シフトサイクルでは、暗期前半に光曝露されることにより容易に視交叉上核リズム位相の後退が生じ、光環境サイクルの前方シフトに再同調するまでには数サイクルの移行期間が必要となることから、慢性的に“社会的”時差ボケ状態が成立することが明らかになった。
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