研究課題
本研究課題の目的はCCN family protein 2/結合組織成長因子(CCN2/CTGF)によって骨のリモデリング時に司令塔として働く骨細胞がどのような影響を受けるのかを骨細胞を介した破骨細胞形成の観点から解析することで、新規骨粗鬆症治療薬開発の可能性を検討することである。平成27年度は平成26年度に作製したタモキシフェン誘導性CCN2欠損マウスの大腿骨からコラゲナーゼによる段階消化によって骨細胞様細胞を単離し、以下の解析を行った。(1) コラゲナーゼによる段階消化によって骨細胞様細胞が単離できているかを確認するために、骨細胞のマーカー分子の一つであるSost遺伝子の発現レベルを調べた結果、単離した骨細胞様細胞にSost遺伝子が非常に高く発現していることを確認した。(2) タモキシフェンを投与してもCCN2が欠失しないマウスから単離した骨細胞様細胞を対照群にして、2群の細胞をそれぞれコラーゲンゲル内で3次元培養し、細胞突起の伸長に影響が見られるかを調べたところ、CCN2の欠失に関係なく骨細胞様細胞の細胞突起の伸長は2群の細胞間で影響は見られず、共に十分細胞突起は伸長した。 (3) 3次元培養した骨細胞様細胞上にマウスマクロファージ系細胞株RAW264.7を播種し、GST融合RANKL (GST-RANKL)で破骨細胞形成を誘導すると、CCN2を欠失させた骨細胞様細胞上で破骨細胞形成を誘導した群で破骨細胞分化に必須の転写因子であるNFATc1と分化マーカー分子の一つであるカテプシンKの産生量が対照群と比較して共に減少した。(4) タモキシフェン投与によってCCN2を欠失させたマウス大腿骨の組織切片を作製すると、CCN2を欠失させていない対照群と比較して大腿骨の骨梁の減少が見られた。
2: おおむね順調に進展している
平成27年度の研究目的はタモキシフェン誘導性CCN2欠損マウス由来の骨細胞様細胞の機能解析に主眼をおいているため、同マウスから単離した骨細胞様細胞を用いて、骨細胞を介した破骨細胞形成の低下を明らかにした点及びタモキシフェン誘導性CCN2欠損マウスの大腿骨を採取し、組織化学的解析によって、大腿骨梁の減少を明らかにした点で、概ね本課題は順調に進展していると考えられる。
平成28年度は老齢期に達したタモキシフェン誘導性CCN2欠損マウスの表現型を解析することを目的としている。タモキシフェン投与によってCCN2を欠失させたマウスを老齢期まで飼育した後に、骨組織への影響をマイクロCT及び免疫組織化学的研究手法により解析する。また、平成27年度では破骨細胞形成の影響をマウスマクロファージ系細胞株RAW264.7を用いて解析したが、平成28年度ではRAW264.7細胞の代わりにタモキシフェン誘導性CCN2欠損マウスの骨髄細胞を使って、破骨細胞形成への影響を調べる予定である。加えて、平成28年度は本課題の最終年度であるため、これまでの実験結果をまとめ、成果発表の準備を行う。
平成27年度の実験計画の当初予定としてタモキシフェン誘導性CCN2欠損マウスの骨組織をマイクロCTを用いて解析する計画であったが、先に組織切片を作製し、組織化学的にその表現型を観察した。そのため、マイクロCT撮影用に計上していた金額が余剰したためである。
平成28年度は、平成27年度にできなかったタモキシフェン誘導性CCN2欠損マウスの骨組織のマイクロCT撮影及び組織化学的な解析を行っていく予定である。平成28年度が本課題研究の最終年度のため、平成28年度に請求する金額と当該金額を合わせて本研究課題を遂行する予定である。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (18件) (うち国際学会 4件) 備考 (1件)
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