研究課題/領域番号 |
26462811
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
松尾 龍二 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (30157268)
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研究分担者 |
美藤 純弘 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (20240872)
藤田 雅子 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助手 (40156881)
寺山 隆司 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (60333689)
小橋 基 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (80161967)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 唾液分泌 / 咀嚼 / 口腔感覚 / 味覚 / 視床下部外側野 / 大脳皮質 / 飲水 |
研究実績の概要 |
本研究の目的の一つは、口腔感覚と咀嚼と唾液分泌の三者の関連性を生理学的に分析することにある。唾液は咀嚼を円滑に推進するだけでなく、口腔粘膜の保護や再生にも重要な因子である。また口腔感覚の機能維持は、引いては味覚機能の維持にも重要である。とくに味覚器である味蕾の外部環境を形成し、その機能を維持する唯一の外部環境因子と言っても過言ではない。初年度意向、その基礎となる唾液分泌動態と行動との関連をラットを用いて動物実験で検討してきた。その結果、平成27年度には咀嚼と唾液分泌の関連性について英文雑誌に論文発表することが出来た。主な内容は、視床下部を中心とする摂食関連中枢が、唾液分泌に大きく関与しており、大脳皮質が咀嚼と唾液分泌を協調させる役割を果たしていることが判明した。 また平成27年度はこの結果を受け、味覚機能と唾液分泌(または唾液成分)との関連性を文献的に検索し、総説として我々の考えをまとめた。これは英文の総説集(単行本)に発表した。主な論点は以下の通りである。、1)唾液中の電解質は常に味受容器を刺激し、塩味に対する閾値を上昇させ閾値上の刺激強度を減弱させている。2)唾液の緩衝作用(炭酸水素イオンと炭酸脱水酵素)は酸味を減少させる。3)唾液は甘味物質と味受容器の反応を促進させ、甘味を増強させる。4)脂肪やデンプンは本来無味であるが、唾液はこれらを消化して新たな味を発生させる。5)高プロリン蛋白やヒスタチンは渋味物質と反応し、渋味の発現に影響すると思われる。6)ムチンは脂肪を乳化し、Statherinは表面張力を低下させることから、触覚に影響すると思われる。7)味細胞は約9日で新生しているが、唾液などの環境の変化により味受容器の感受性が変化してくる。これは唾液が味覚感受性の個人差、老化や味覚障害患者に見られる味覚感受性の低下に関与することを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の当初研究計画案では、1)唾液と口腔感覚の関連、2)顎運動と唾液分泌動態、3)唾液分泌の中枢神経機構(免疫組織化学的研究)を遂行する予定であった。現在までのところ、全ての項目に関連する業績が発表できている。また現在、論文発表を準備しているものもある。
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今後の研究の推進方策 |
当初の目的であった1)唾液と口腔感覚の関連、2)顎運動と唾液分泌動態については、順調に論文作製まで至っている。3)唾液分泌の中枢神経機構については、機能的側面は部分的に論文発表まで至っているが、免疫組織化学的研究については、十分なデータが得られていない。今後、この点を追加実験を行なう。しかし十分な結果が得られない場合もあるので、機能的解析(電気生理学的実験)も増やした実験計画を遂行する。具体的には、唾液分泌中枢(上唾液核)の神経伝達物質への感受性を調査して、上位中枢との関連を検索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
唾液分泌中枢における免疫組織学的研究では、唾液核への色素注入の段階で、十分な成果が得られなかったため、遅れが生じている。このため当初の計画で使用する予定であった費用を繰り越している。
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次年度使用額の使用計画 |
免疫組織学的研究に必要な消耗品(免疫染色キットなど)を購入予定である。また免疫組織学的研究と並行して行なう電気生理学的実験では、当初の予定よりも費用が必要な可能性があるので、この実験に必要な消耗品にも充当する。
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