研究対象としたTMEM16E遺伝子は遺伝性疾患の原因遺伝子であり、ミスセンス変異(機能獲得)は優勢遺伝形質として顎骨骨幹異形成症(GDD)に連鎖する一方、ナンセンス変異(機能喪失)は劣性形質として肢帯型筋ジストロフィー(LGMD2)に連鎖する。 LGMD2罹患者の病態よりTMEM16Eの生理的機能は筋の恒常性維持にあることが明らかである一方で、ミスセンス変異が生理的機能部位以外の骨組織に異形成症を発症させる現象はTMEM16Eの機能の複雑性を示唆している。 研究期間中にノックアウトマウスは通常飼育下ではヒトLGMD2の疾患モデルとならないことを組織学的所見より見出していたが、他研究機関より本遺伝子欠損マウスの報告が相次いで先行したが、この所見は1報告を除き他機関においても確認された。しかし、ノックアウトマウスでは不顕性であったが、筋組織でのTMEM16E機能を見出すためには、さらなる解析が必要である。 また、1報告により新規に判明したTMEM16E欠損によるマウス男性生殖能の低下は研究期間中に追認できたが完全不妊ではなかった。 一方GDDミスセンス変異型TMEM16Eノックインマウスは個体サイズが大きくなるが早期に男性不妊の傾向が認められ系統維持が困難となったため、系統維持に努めている。 最終年度に開発したモノクローナル抗体は陽性ハイブリドーマを40クローン樹立することができたためTMEM16Eの解析において有効なツールを得ることができた。
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