研究課題/領域番号 |
26462816
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
増山 律子 長崎大学, 医歯薬学総合研究科, 准教授 (60297596)
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研究分担者 |
小守 壽文 長崎大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (00252677)
山中 仁木 長崎大学, 先導生命科学研究支援センター, 助教 (30533921)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | リン / 恒常性 / カルシウム / ビタミンD / ピロリン酸 |
研究実績の概要 |
リン恒常性は、カルシウム代謝と連動しながら組織石灰化の制御に関係する重要な生理機能であるが、細胞外液リン濃度の変化を感知する機構は不明である。カルシウム代謝と同様にリン代謝もビタミンD作用による調節を受けるため、ビタミンD作用と連動した細胞外液リン濃度応答機構の解明を目指す。その中でも、カルシウムとリンの石灰化を強力に調節するピロリン酸代謝系に注目し、細胞外液リン濃度の変化にピロリン酸代謝系の細胞内局在がどの様に応答するかを検討する。 平成26年度は、リン栄養変化時に消化管粘膜上皮細胞で発現応答するリンセンサー候補の絞り込みを行った。 まず、ビタミンD作用下で働く分子を特定するために、野生型マウスおよび小腸VDR KOマウスに正常食、あるいは、リン制限食の投与を行い、小腸粘膜上皮組織におけるピロリン酸代謝分子の発現量の変化や細胞内局在を免疫組織化学染色により検討し、ピロリン酸代謝分子の細胞膜上での局在の変化を確認した。さらに、消化管内液を回収し、消化管内でのピロリン酸-ATP量の変化が、小腸粘膜上皮のピロリン酸代謝分子の局在変化とマッチすることを確認した。これにより、ピロリン酸代謝分子がリンセンサー候補として選出された。 つづいて、細胞外液リン濃度の増加に伴い、カルシウムイオンチャネルやカルシウムポンプ等のカルシウム輸送系分子の発現や細胞内局在の変化をピロリン酸代謝分子と同様の方法で観察した。すると、細胞外リン濃度の変化に応じて速やかに経細胞カルシウム輸送系に変化がみられた。この結果から、カルシウム輸送系分子の細胞内局在調節に、リンセンサー分子が関与している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ピロリン酸代謝系分子を中心に、細胞外リン濃度の変化に応答するセンサー分子の絞り込みを予定していたが、センサー候補だけでなく、細胞外液リン濃度の変化に応じて極めて速やかにカルシウム輸送系が変化することから、リンセンサーの制御下にある代謝系をとらえることが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
2年目以降はリンセンサー候補分子の遺伝子発現調節領域を用いて、リンセンサーが発現する局所でカルシウムイオンの流入を感知する遺伝子組み換えマウスを作出する予定である。1年目に既にリンセンサーの標的となる細胞機能(経細胞カルシウム輸送系)は特定されたと考えられる。したがって、細胞外リン濃度の変化が細胞機能を変化させる時の、細胞内シグナルの精査を優先する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度には、イオン電極カルシウム測定装置の購入を予定していた。しかしながら、動物の繁殖飼育を初年度から開始すべきと判断し、飼育費(その他に該当)経費が予定額を超えたため、購入計画を変更した。ただし、カルシウムイオンのみに対応した簡易型のイオン電極測定装置を購入し、当該年度に予定された実験を行った。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度に予定される実験を実施するためには、カルシウムイオン以外の電解質(ミネラル)測定可能な電極が必要である。実験結果としてどの様なミネラル分析データが必要かを得られた実験結果から絞り込み判断し、平成26年度の未使用額を追加の簡易型イオン電極購入に使用する。
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