研究課題
カルシウムやリンの恒常性は、互いに連動しながら細胞活動や組織石灰化を制御する。我々は骨量減少モデルマウスへ投与する食事リン量を制限すると、小腸カルシウム吸収は増加し骨カルシウム恒常性が改善されることを報告した。しかしながら、小腸上皮組織でカルシウムやリンはどの様に感知されてそれぞれの吸収が調節されるのか、具体的な分子基盤は確立されていない。本研究では、ビタミンD依存的なカルシウム吸収を失った小腸ビタミンD受容体欠損マウスを実験モデルとして、食事リン制限に応答する分子による新たなカルシウム吸収調節機序を検討した。平成26年度は、小腸ビタミンD受容体欠損マウスに対するリン制限食の投与がカルシウム吸収を増加し、カルシウム恒常性維持に強く貢献する事を確認した。ビタミンD作用とは独立したカルシウム輸送系の存在を検討し、ATP依存的なカルシウム輸送系の関与が示された。平成27年度は、小腸上皮細胞においてATP依存的カルシウム輸送を調節するATP消去酵素の発現ならびに小腸上皮における局在化が細胞外液リン濃度の変化に影響されることを確認した。さらに、外液リン濃度に応答し、ATP消去酵素の発現・膜局在化を制御する細胞内シグナルが同定された。
2: おおむね順調に進展している
細胞外リン酸濃度依存的に小腸カルシウム吸収が調節される現象に注目し、小腸特異的にビタミンD作用を欠く変異マウスでのカルシウム吸収を摂取リン量の変化で改善したことから、ビタミンDの作用とは独立した新規カルシウム輸送調節系を検討した。細胞外液リン濃度に応答する細胞内シグナルを同定し、細胞外ATP消去系との連動を明らかにした。さらに、ATP依存的な経細胞カルシウム輸送を、小腸上皮で観察した。
本年度はATP消去酵素欠損マウスの局所組織の石灰化ならびにカルシウム輸送能を評価する。リン応答ATP依存的カルシウム輸送系の生理的な意義を評価し、リンセンサーとしての機能を検討する。
イオン化カルシウム測定のためのイオン電極型測定装置一式を購入予定であったが、予定していたマウスの作出を変更したことから、イオン化カルシウムを高感度で測定するために、検出方法を変更し、それに伴う未使用額が生じた。
イオン電極法から高感度検出法に変更したため、次年度以降に比色・蛍光測定試薬、放射性同位体検出試薬一式等の購入を予定している。
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