研究実績の概要 |
本研究は、唾液腺細胞における開口分泌と、Ca2+ならびにcAMPシグナル、SNAREタンパクの関わりを明らかにして、唾液腺における開口分泌の分子基盤を解明することを目的とする。 1)Ca2+センサー(YC-Nano50, G-GECO, R-GECO)を発現するレンチウイルスベクターを作製し、これらを用いて唾液腺由来培養細胞(HSY)に上記のCa2+センサーを発現させた。蛍光強度および発現細胞数はベクター導入後徐々に増加し、導入1か月後でも発現していた。このレンチウイルスベクターをラットの顎下腺から逆行性に注入し、顎下腺にCa2+センサーを発現させた。約5か月後、in vivoにおいてアセチルコリン刺激によるCa2+応答が観察されたことから、レンチウイルスベクターを用いた長期的発現実験が可能であることが示された。 2)cAMPセンサー(Flamindo2)を培養細胞に発現させ、β刺激によるcAMPシグナル変化の測定に成功した。このFlamindo2とR-GECOを同時に発現させることで、cAMPとCa2+シグナルの同時解析が可能となった。 3)ムスカリン受容体アゴニストのピロカルピンを前投与(1週間前および1日前)すると、非前投与のコントロールと比較して、唾液分泌量およびアミラーゼ分泌量が増加していた。顎下腺にYC-Nano50を発現させ、in vivoでCa2+応答を測定すると、ピロカルピン前投与群ではコントロールに比べてアセチルコリン感受性が増大する傾向にあった。 4)この亢進作用には遺伝子発現変化を介することが考えられたため、次世代シークエンスによる遺伝子発現の網羅的解析を行った。非前投与群に比べて前投与群で2倍以上発現変化する遺伝子が顎下腺で120、脳で50遺伝子検出された。いくつかの遺伝子に対して定量PCRを行い、発現量変化の再現性を確認した。
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