研究課題/領域番号 |
26462825
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研究機関 | 鶴見大学 |
研究代表者 |
島田 明美 鶴見大学, 歯学部, 講師 (00339813)
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研究分担者 |
二藤 彰 鶴見大学, 歯学部, 教授 (00240747)
和田 悟史 鶴見大学, 歯学部, 助教 (20581119)
山下 照仁 松本歯科大学, 総合歯科研究所, 准教授 (90302893)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | アネキシンA5 / 腱 / 骨 |
研究実績の概要 |
昨年度までに、アネキシンA5(Anxa5)が骨と腱・靭帯付着部(enthesis)に発現すること、Anxa5機能欠損マウス(Anxa5-/-)のenthesisでは生後発達に伴い骨の増大を示すこと、この表現型が運動制限により消失することを見出した。 本年度は、enthesisの生後発達過程におけるAnxa5の機能についてさらに解析を進めた。enthesisは軟骨を介する線維軟骨性付着とこれを介さない線維性付着とに分類できる。そこで両者の表現型を比較したところ、線維軟骨性付着である脛骨と腓腹筋腱、大腿骨と内転筋腱、および下顎骨と顎二腹筋腱の間の付着では、いずれも骨の増大を認めたのに対し、線維性付着である脛骨と内側側副靭帯の間においては、皮質骨の増大は顕著ではなかった。組織学的解析の結果、腓腹筋と脛骨の付着部において線維軟骨層の増大を認めた。この線維軟骨はAnxa5-LacZ陽性の細胞で構成されていたが、線維性付着部においてはAnxa5-LacZはほとんど検出されなかった。また線維軟骨層には、野生型と比べてアルカリフォスファターゼ活性の強い細胞が多く観察された。カルセイン標識の結果、これらの細胞が石灰化に寄与することが示された。一方、TRAP陽性細胞の数や分布に顕著な差は認められなかった。これらの結果は、Anxa5が腱・靭帯付着部の石灰化に対し抑制的な調節機能をもち、それは線維軟骨の機能制御を介する可能性を示唆する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
EnthesisにおけるAnxa5発現細胞の大部分が線維軟骨層に分布すること、軟骨細胞を含まない線維性付着において顕著な表現型が認められなかったことなどから、Anxa5が軟骨細胞において重要な機能を果たすことが示唆された。今後の研究推進方策を絞り込むことができた。
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今後の研究の推進方策 |
Anxa5が線維軟骨を構成する細胞に強く発現すること、またAnxa5-/-マウスの腱・靭帯と骨の付着部のうちでも線維軟骨を介する付着部位において特異的な骨の肥大が認められたことから、Anxa5の軟骨細胞における機能欠損が付着部における骨の肥大を生じることが推測される。よって本年度は培養軟骨細胞、および軟骨用細胞株であるATDC5を用いてAnxa5欠損による細胞の増殖と分化への影響を調べる。具体的にはAnxa5-/-と野生型マウスの肋軟骨から軟骨細胞を初代培養し、その増殖能と分化能をBrdUの取り込み、分化軟骨マーカーの細胞免疫染色、およびリアルタイムPCRによる分化マーカー遺伝子の発現解析により明らかにする。また、ATDC5にBMP等を添加した軟骨分化系を用いて、Anxa5遺伝子に対するsiRNAによりAnxa5遺伝子をノックダウンし、同様の解析を行う。特に後者の系では、siRNAによるAnxa5遺伝子ノックダウンを行った後、伸展刺激下におけるよる増殖と分化への影響を調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、腱・靭帯と骨の付着部における骨肥大の要因として、腱細胞と骨芽細胞との細胞間相互作用の影響を推定し、腱細胞と骨芽細胞との共培養系等の解析を進めていた。しかし、再現性のある結果が得られなかったため、形態学的、組織学的により詳細な解析を進めたところ、軟骨細胞における直接的なAnxa5の関与を示唆する結果が得られた。一連の検討のため、研究方策を変更することとなり、予定していた試薬等購入のための研究費に残額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
Anxa5の軟骨細胞の増殖・分化への影響に注力した解析を行うため、試薬ならびに器具類の購入等に使用する。
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