研究課題/領域番号 |
26462830
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
大西 芳秋 独立行政法人産業技術総合研究所, バイオメディカル研究部門, 研究グループ付き (60233219)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 唾液 / 生物時計 / 生体時刻 / 概日リズム |
研究実績の概要 |
生体時刻測定に用いる唾液試料に関して、全唾液と純唾液が想定される。耳下腺唾液はカービーカップを用いて容易に採取できるが、解析に用いる量を採取するには時間がかかりすぎる。顎下腺や舌下腺は採取するために技術を要し、簡単に採取でいない。さらに口蓋腺、口唇腺などの小唾液腺は分泌量も少なく、採取も非常に困難である。全唾液は、採取が容易で、確実に採取できるが、口腔内微生物や白血球、食品由来のタンパク等が含まれており、夾雑物を除くために遠心分離やフィルターによるろ過等の前処理が必要となる。再現性良く生体時刻を測定するためには、採取時間が長いものは不適であることより、全唾液を用いることとして種々の条件について検討を行った。 全唾液には多くのプロテアーゼが含まれており、特に口腔内炎症疾患を持つ患者はペプチダーゼの活性が上昇している。このため唾液採取後、低温保存するプロトコールや唾液タンパクの分解を防ぐRNAprotect Saliva reagent (Qiagen)の添加が有効であるとの報告がある。そこでRNAprotect Saliva reagent添加し保存、その後同唾液試料を用いてウェスタンブロット解析を試みたところ、保存試料そのままでは塩の析出が観察され使用できないことが判明した。 そこでタンパク変性材として4M尿素を含む緩衝液を用いて唾液試料を保存し、ウェスタンブロット解析したところ、37℃で24時間放置しても生体時刻マーカータンパク、β-アクチン共に継時的な分解は見られず、4M尿素を含む緩衝液が唾液試料の保存に適していることが判明した。 これらの実験より、生体時刻測定のために採取された唾液試料の保存条件が確定され、今後多様な唾液試料を解析する際にも、試料間での試料取り扱いに起因する誤差を最小限にすることができるようになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究目的は唾液試料の採取方法ならびに保存方法を確定することである。前述のように尿素存在緩衝液にて保存した全唾液を用いて生体時刻を測定できることが判明しており、研究が当初計画通りうまく進行していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
唾液の保存条件を確定し、唾液試料保存によるタンパク分解の影響について知見を得ることができた。4M尿素を含む保存液中に保存するとタンパク分解が抑えられるのみでなく、ウェスタンブロット解析等にもそのまま使用することができるため、本溶液に唾液試料を保存することにした。今後、尿素存在下保存唾液試料を用いて次年度以降の実験を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
成果発表のための参加学会が近郊であっため、旅費等の経費が少なく済んだため。
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次年度使用額の使用計画 |
研究計画自体は予定通り進行しているため、次年度の研究計画に大きな変更は必要ないと考えている。次年度は全唾液を用いて体内時計による発現変動以外のタンパク変動要因を補正することを目的に、内部標準タンパクを選定する予定である。このため抗体を用いて種々のタンパク発現を検出することになるが、同一タンパクに対して多様な抗体ロットが存在しており、高感度検出できるよう条件検討に研究費を使用する予定である。
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