研究実績の概要 |
全唾液を生体時刻決定に用いる場合においても、体内時計による日内変動のみならず、個々の唾液腺の変動、食事やホルモン等の刺激、疾患、個体差により全唾液腺に含まれるタンパク組成は変動する。このため採取した全唾液において体内時計による変動以外のタンパク変動要因を補正する必要がある。そこで、このための内部標準マーカータンパクの同定を行った。同一人物で採取時間が異なる全唾液試料(AM 8:00とPM 8:00)2組に対してタンパク変性材として4M尿素を含む緩衝液を用いて全唾液試料を保存し、IgA, Lysozyme, Albumin, Fibronectin, Mucin, Amylaseをウェスタンブロット解析した。市販の抗体を用いて通常の実験方法 (Nucleic Acids Res. 2012 Oct;40(19):9482-92) にて検出を試みたところ、Fibronectin, Mucinはタンパクバンドを検出することができなかった。さらに唾液試料濃度や抗体濃度、ケミルミネッセンス増感剤等を用いても同一ロットの抗体ではFibronectin, Mucinは検出不可能であった。これらのタンパク質については、次年度ロットの異なる抗体を用いて再度検討を行う予定である。本来、内部標準タンパク質としては、個体間の発現量の差があったとしても採取時間によって変動が少ないタンパクが候補となる。そこで採取時間による発現変動が一番小さいタンパクであるばかりでなく、性別や年齢に依存せず機能することも重要である。今年度の研究結果からはβ-Actinが上記条件を一番満足していたが、今年度検出できなかったFibronectin, Mucinを次年度再検討したうえで、最適の内部標準タンパク質マーカーを確定したい。
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