ヒト唾液腺細胞にRev-erb alphaおよびBmal1を発現させた後、100 nM Dexamethasoneで2時間処理することにより当該細胞の概日時計をリセットした。次いで、ChIP (Chromatin immunoprecipitation)を行い、Rev-erb alphaおよびBmal1により転写調節されている遺伝子領域を回収、精製した。回収されたDNAをプローブとしてプロモーターDNAアレイ(NimbleGen社製)を用いて解析した結果、Bmal1により転写調節されうる遺伝子が797、Rev-erb alphaにより転写調節されうる遺伝子が2076あり、そのうち両方に調節されている遺伝子は500であった。これら遺伝子群は、唾液腺固有の時計システムで制御されうる遺伝子群である。この唾液腺固有の時計システムで制御されうる遺伝子群のうち、100 nM Dexamethasoneで2時間処理して時計遺伝子をリセットし、24時間後ならびに36時間後のRNAを用いてAgilent社製マイクロアレイ解析を行い、概日発現変動量の大きい遺伝子の選択を行った。両時刻において変動が0.5(底が2の対数)以上の遺伝子を選択したところ1368遺伝子が選択され、このうち先のChIP on Chip解析と重複する遺伝子は22となった。選択された22遺伝子のうち、DNAマイクロアレイにおいて遺伝子発現が非常に弱い、シグナル強度が50以下の遺伝子を除いた16遺伝子について、ヒト正常唾液腺細胞においての遺伝子発現の有無を市販のヒト正常唾液腺RNA (TAKARA)を用いてRT-PCRにて検討し、8遺伝子を同定した。選択された8遺伝子の概日リズムについてRT-PCRにより検討した結果、概日リズム周期性が観察された遺伝子は3遺伝子に絞られ、これら遺伝子のうちで、ヒト唾液を用いてタンパク質の検出ができたのはARRB1のみであった。さらにActinを対象タンパク質としてウェスタンブロット解析を行ったところ、いずれの唾液試料においてもARRB1タンパクの概日リズム発現を確認することができた。
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