研究課題/領域番号 |
26462832
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
菅原 由美子 東北大学, 大学病院, 助教 (30235866)
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研究分担者 |
笹野 高嗣 東北大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (10125560)
菅原 俊二 東北大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (10241639)
西岡 貴志 東北大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (50641875)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 口腔扁平苔癬 / びらん・潰瘍病変 / 組織診断 / 細胞診断 |
研究実績の概要 |
Good症候群は胸腺腫に低ガンマグロブリン血症を合併した稀な疾患である。胸腺腫は全縦隔腫瘍のほぼ30%を占め重症筋無力症を始めとする様々な免疫異常による随伴症状を合併する。低ガンマグロブリン血症を合併するGood症候群は胸腺腫患者の5%にみられる。我々は口腔扁平苔癬の経過からGood症候群の診断に至った1例を経験した。患者は 56歳男性。両側頬粘膜、舌背、舌下部~舌縁部に潰瘍を伴う白色レース状病変を認めた。臨床検査ではγグロブリン、IgGが基準値低値、IgA、IgMは低下していた。病理組織では口腔扁平苔癬の組織像であった。同じころ人間ドッグにて胸部異常影を指摘される。病理組織では胸腺腫(TypeAB、正岡Ⅱ期)の診断であった。更なる精査にてIgG,IgA,IgMの低下とB細胞サブセットであるCD19の著明な低下を認め、最終的にGoood症候群の診断となった。 口腔扁平苔癬は慢性炎症性角化病変で難治性の疾患である。白板症や初期口腔癌および他の紅斑・びらん・潰瘍性疾患との鑑別が必須で、的確な診断と長期的な経過観察が必要である。我々は、口腔扁平苔癬と臨床診断した症例について生検を行い、組織診断と細胞診断とを比較検討した。 症例は白斑3例、網状型2例、びらん型5例 (白色型5例、紅色型5例)であった。組織診断結果は初期扁平上皮癌が2例、口腔扁平苔癬が8例であったが上皮組織内に異型細胞が散見されたものが2例 あった。剥離細胞診断結果はClassI 陰性が1例、ClassII 陰性が8例、ClassIII 疑陽性が1例であった。10症例中5症例に組織診断と細胞診断に所見の違いがあった。口腔扁平苔癬における剥離細胞診断による異型細胞の検出率は、感度が0%、特異度が83%であった。特に白色型では異型細胞の検出が困難であった。口腔扁平苔癬では組織診断が必須であり、補助診断として細胞診断が有用と思われた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
口腔粘膜のびらん・潰瘍病変である口腔扁平苔癬の病理組織学的解析は順調に進んでいるが、免疫組織学的解析が遅れており未だ結論に至っていないため、やや遅れている状況である。
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今後の研究の推進方策 |
Good症候群において、胸腺腫瘍ではT細胞の分化が未発達のため、抗原提示能力も未発達であるという事象は、口腔粘膜のびらん・潰瘍病変の病因を占める、免疫異常と抗原提示能の異常を惹起するメカニズムの解明に大いに役立つ。したがって、免疫組織化学的解析が十分進めるよう、新しい種類の抗体試薬を購入していく。更に、最新の研究情報を収集していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
未だ病変組織での十分な発現を解析できる結果が出ていない。そのため、さらに他の種々の抗体試薬を用いて解析を行い進めていくこととしたため。
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次年度使用額の使用計画 |
免疫組織学化学的に検索を進めていくために、引き続き新しい抗体試薬の購入を購入し、免疫組織染色での解析を進めていき、学会発表等、積極的に研究成果を次年度に国内外に発表していくこととし、未使用額はその経費に充てる計画である。
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