研究課題
拡散テンソルMRI (Diffusion Tensor Imaging, DTI)は、生体内に存在する水分子の拡散異方性を解析するMRIの手法である。本研究は、DTIを歯科臨床に応用し、下歯槽神経や咀嚼筋の損傷や回復を評価するための新しいMRI画像診断法を開発することを目的としている。我々はH28年度までに、DTIを下歯槽神経の診断に応用し、健常者における下歯槽神経のFA値 (Fractional Anisotrophy)をはじめて明らかにした。H29年度はDTIと関連するIVIM (intravoxel incoherent motion)解析を応用して、顎関節症患者における咀嚼筋損傷の定量的評価を試みた。すなわち本学倫理審査委員会の承認のもと、顎関節症患者の外側翼突筋部の水分子の拡散および灌流をIVIM解析によって評価し、顎関節部MRI所見との関連を明らかにすることを目的として研究を行った。その結果、非復位性関節円板前方転位を伴う患者群では円板位置異常のない患者群と比較して、外側翼突筋の上頭においてIVIMのf値 (灌流値)が有意に増加することが明らかとなった。一方で同筋の下頭ではf値に有意差を認めなかったが、これは上頭のみが顎関節円板に付着しているという顎関節の解剖学的構造によるものと考えられた。更に下顎頭変形を認めた群では上頭、下頭ともにD値 (拡散値)の有意な上昇が見られたが、これは下顎頭変形によって筋の機能低下や萎縮が生じ、その結果外側翼突筋内の細胞外間隙が拡大して細胞外水拡散が増加したためと考えられた。これらの研究成果について、国際誌にて報告を行った。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 図書 (1件)
Dentomaxillofacial Radiology
巻: 47 ページ: 20170245
10.1259/dmfr.20170245
Progress in Orthodontics
巻: 19 ページ: 7
10.1186/s40510-018-0204-6
巻: 46 ページ: 20160424
10.1259/dmfr.20160424
巻: 46 ページ: 20170307
10.1259/dmfr.20170307