自然免疫における補体系の最初の分子であるC1qのC末端部球状ドメインや腫瘍壊死因子(TNF)と同様の構造をもつ一連の分子群が「C1q/TNFスーパーファミリー」として総称されるようになり、アディポネクチンパラログとして注目されていた。これらの分子はアディポネクチンと同様に、多量体構造をとる分泌蛋白質であり、細胞外に分泌されることにより細胞間シグナルを伝達する分子として多彩な機能をもつことが知られていた。研究代表者らが軟骨細胞から同定し、「軟骨から産生される分泌蛋白」という意味で “Cartducin(カートデューシン)”と名付けられた分子は分子量26-kDaの機能未知の分泌蛋白をコードしており、「C1q/TNFスーパーファミリー」にCTRP3として属することが明らかになっていた。 最終年度は主にin vivo解析として、我々が作製したCartducinヘテロ欠損マウス同士を交配させてCartducinノックアウトマウスを獲得し、個体内でのCartducinの骨格筋形成に関する機能を調べた。前年度までのin vitro解析において、Cartducinは筋芽細胞の増殖を促進する一方、筋芽細胞から筋管細胞への分化を抑制することが明らかになっており、骨格筋の形成に関わっている可能性が示されていた。そのため、Cartducinノックアウトマウスにおいて骨格筋に何らかの形態異常が生じることが予想された。しかしながら、Cartducinノックアウトマウスにおいて骨格筋形成の明らかな異常は認められなかった。この結果は、他のC1q/TNFスーパーファミリー分子との機能的Redundancy(分子欠損時の代償)によるものではないかと考えられた。
|