最終年度は、ウェーブレット変換による画像解析法の診断精度をより高めるために今までのウェーブレット変換(WT)に比べて、より多くの画像特徴量が得られるデュアルツリー複素ウェーブレット変換(DT-CWT)を用いて解析法の改良を行った。 前年度と同様の解析の対象においてDT-CWTを用いた解析法での診断精度を以前までのWTを用いた解析法の場合と比較した。対象は長崎大学病院で超音波検査ならびに唾液腺造影検査を受けた患者174人の耳下腺部超音波画像であり、シェーグレン症候群の診断基準で陽性とされた症例77人ならびに陰性とされた症例97人のデータである。シェーグレン症候群と診断された77人は唾液腺造影検査により重篤度が大きくなる順に4段階にグレード分類されている。サポートベクターマシンによる機械学習と交差検証法を用いて求めたシェーグレン症候群に対する診断精度の結果では、DT-CWTによる解析法の場合はグレード1と2の低グレード群の感度は90±3.7%とWTによる解析法の場合の感度85±2.6%に比べて統計的に有意に高く(p<0.05)、正確度においてもDT-CWT の場合は88±4.2%とWTの場合の82±4.9%に比べて有意差は見られなかったもののやはり高い結果となった。また、同じ症例の歯科医師による低グレード群の診断精度は感度79%、特異度81%、正確度80%というデータがあり、これと本解析法による診断精度を比較すると感度および正確度は本解析法が統計的に有意に高く(p<0.05)、臨床での診断支援における有用性を示した。 ウェーブレット変換による画像解析は画像の空間周波数解析としてフーリエ変換と異なり非周期的な画像の解析により適しており、本研究のようにシェーグレン症候群の特徴抽出にも役立つことが示された。本解析法は他の病変の画像診断への応用も可能と考えられる。
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