口腔がんの治療において、形態及び機能の温存治療が社会的にも求められている。口腔がん患者の腫瘍組織には、その82%にRAGE(終末糖化産物受容体)が発現しており、RAGEががんの進展・転移に大きく影響していることが報告されている。一方、口腔がんに特異的に過剰発現している粘液の主成分で高分子糖蛋白質ムチンMUC1は、大腸がん、前立腺がん、乳がんなど多くのがんにおいてもその過剰発現が高頻度にみられる分子であり、がんの分子標的として注目を浴びている。そこで本研究では、遺伝子工学技術を用いて口腔がん細胞上のRAGEを標的とした新規薬剤を作成し、その効果とメカニズムを検証することを目的とした。 多くのがん細胞では、HMGB1やその他の増殖因子を自ら産生し、オートクリン的にRAGEなどの自らの細胞表面に発現している受容体に作用させ、増殖する。今年度は、今回作成した抗RAGE抗体が、RAGEを介した細胞増殖に阻害効果を持つかどうかを検討した。はじめに、がん細胞を抗RAGE抗体で処理を行い、その後HMGBを加え、Erk1/2のリン酸化を抑えることができるかどう検討したところ、今回作成した抗体で、RAGEを阻害する傾向が確認できた。これらの抗体は、RAGE及びMUC1を発現しているがん細胞において、腫瘍の増殖抑制をもらたす可能性を示した。特に、RAGEについては、さまざまながん種で発現しているため、今後のがん治療に貢献できる可能性を示した。
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