研究課題
歯周病原因菌の感染と腹膜透析患者の腹膜障害の進行との関連性及びそのメカニズムを解明するため、 腹膜透析患者から得られた腹膜透析排液に歯周病原因菌が検出できるかどうかを試みた。今回の実験では、大動脈瘤や切迫早産妊婦の羊水等からの検出が報告されているP. gingivalisを歯周病原因菌の標的とした。腹膜透析患者83名から腹膜透析排液を回収し、P. gingivalisの検出を試みたがすべての検体において不検出であった。次に腹膜透析患者において他のバクテリア感染の有無を調べたところ、83名中35名(42%)が細菌感染は陰性であったが、残りの48名は何らかの細菌感染があった。主な細菌はStaphylococcus属(17%)、Streptococcus属(12%)、Enterococcus属(7%)であった。一方、歯周病原因菌感染のみならず腹膜透析患者の腹膜障害時においても免疫応答がおこり、サイトカインや増殖因子といった炎症メディエーターが増加することが報告されている。そこで腹膜透析継続患者と離脱患者の腹膜透析排液中の補体活性化レベルを検討した。腹膜透析排液の補体活性化レベルをC5a、C4a、C3aの3つを同時に計測できるCBAアナフィラトキシンkitで測定したところ、C5a、C3aが腹膜透析離脱患者において高い値であった。今後は腹膜透析排液中のサイトカインや増殖因子(VEGF-A、VEGF-C、CTGF)などをELISA法で測定する予定である。
2: おおむね順調に進展している
腹膜透析患者の腹膜透析排液検体を集めるのに時間を要したが、限られた検体の中で予定していた研究は概ね行えた。
より正確なデータを得るために引き続き腹膜透析排液検体を集める。本年度と同様の実験を行うとともに、腹膜透析排液中のサイトカインや増殖因子(VEGF-A、VEGF-C、CTGF)などをELISA法で測定する。また、歯周病原因菌に対する血中抗体価を測定し、腹膜透析治療期間及び腹膜障害パラメータとの関連を比較して検討する。
主となる論文投稿を行わなかったため若干予算が残った。
得られたデータを元に論文を投稿する。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (3件)
Mol Immunol
巻: 65 ページ: 302-309
10.1016/j.molimm.2015.02.005.