研究課題/領域番号 |
26462851
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研究機関 | 愛媛県立医療技術大学 |
研究代表者 |
玉内 秀一 愛媛県立医療技術大学, 保健科学部, 教授 (60188414)
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研究分担者 |
小茂鳥 潤 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (30225586)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 金属アレルギー / 転写因子 / ノックアウトマウス / トランスジェニックマウス / GATA-3 / サイトカイン |
研究実績の概要 |
金属アレルギー発症機序は、これまでTh1型免疫反応の関与が特に重要であることが示唆されていたが、GATA-3遺伝子導入(GATA-3 Tg)トランスジェニックマウスを用いた研究から金属(ニッケル)アレルギー誘導初期には、IL-4依存的なTh2型免疫反応がアレルギー反応の強弱を決定していることが明らかになった。また、転写抑制因子Gfi-1遺伝子欠損(Gfi-1KO)マウスを用いた金属(ニッケル)アレルギー誘導において、アレルギー反応が増強されることが明らかになった。組織中サイトカイン産生プロフィールを検討したところ、CD4陽性細胞からIFN-γ(とTNF-α)産生が対照(Gfi-1陽性)と比較して著明に高くなった。 In vitro でGfi-1KOマウス脾臓CD4陽性細胞を抗CD3と抗CD28抗体で非特異的に刺激した場合、そのサイトカイン産生能について検討したところ、本マウスのCD4陽性細胞は高率にIFN-γを産生することが明らかになった。従って、これらの事実から、Gfi-1遺伝子がTh1型免疫の抑制的制御に関わっていることが明らかにされ、金属(ニッケル)アレルギーにおけるこれまでの発症機序に、Th1型免疫反応がやはり重要であることが明らかになった。ただし、Th1型の反応の関与は、48-72時間以降であるが、著明な差が認められたのは96時間以降であった。従って、金属(ニッケル)アレルギーの発症機序には、誘導初期にTh2型及び晩期誘導にTh1型免疫反応の両方が病態形成に関与することが明らかにした。 これまでに、NKT細胞の関与が示唆されるデータも得ている。Gfi-1KOマウスでは、NKT細胞の著明な減少がみとめられることから、NKT細胞が金属(ニッケル)アレルギーの病態形成にどのように関与するかをも今後詳細に検討する必要性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々が独自に樹立したマウス金属アレルギーモデルをこれまでに構築すると共に、種々のアッセイ系を確立してはいたが、研究代表者である玉内秀一の北里大学医学部から愛媛県立医療技術大学に移つり、研究の停滞が危惧された。しかし、愛媛大学大学院医学研究科・山下政克教授および研究室スタッフや北里大学大学院医学研究科岩渕和也教授の協力で、これまで以上の新たな情報や手技の提供で、愛媛で研究を順調に切ることができた。その結果、年度計画以上の研究を推進する事ができた。また、慶応大学大学院理工学研究科・小茂鳥潤教授のこれまで同様の材料の提供も、研究推進の一因となっている。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、飼育施設の改修工事等でマウスの繁殖維持に制限がかけられていたが、本年度よりその規制が解除されたことから本目的である他遺伝子改変を用いたより詳細な金属アレルギー発症における種々免疫担当細胞の役割について検討を加えることが可能となった。実験手技及び材料の調達は既に軌道にのっていることから順調に研究を推進できることは明らかになっている。これらの状況を鑑み、特に平成27年度は、NKT細胞や他転写因子欠損マウスを用いた金属(ニッケル)アレルギー発症機序への関与をより詳細に検討することを目的とする。各種分離した免疫担当細胞移入RG2KOマウスに金属(ニッケル)アレルギーを誘導した際の耳介腫脹反応についての検討やNKT細胞欠損マウスを用いた実験を遂行し、NKT細胞の金属アレルギー誘導における関与を明らかにする。また、金属アレルギー誘導した際の抗体産生の関与をこれまで検討してきた。その結果、IgE抗体の関与が示唆され、Th1型依存抗体IgG2aへの影響は認められなかったことを報告してきた。しかし、C57BL/cバックグラウンドマウスであるマウスでは、IgG2aに関与する遺伝子が欠損していることが明らかになっていることから、IgG2aに対応するIgG2cに対する抗体価を検討し、これまでに得られたデータの妥当性について明らかにしたい。本問題については、既に検討に入っており検出に用いる抗体によりIgG2aとIgG2cに対して交差を示す抗体が存在することを確認した。
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