研究実績の概要 |
平成28年度は、まず初代ヒト口腔上皮細胞が、エクソソームを分泌するかどうかについて検討した。口腔上皮細胞から得られた培養上清中における細胞外小胞の粒子数と粒子径の分布をNanoSight によって計測した。粒子径のMode値は108.3nm、粒子数は5.3 x 108個/mLであった。次に初代ヒト歯根膜線維芽細胞について同様な解析を行った。歯根膜線維芽細胞では、粒子径のMode値は108.9nm、粒子数は5.6 x 109個/mLであった。これより、ヒト口腔上皮細胞はエクソソームを分泌するが、その量は少なく、歯根膜線維芽細胞の1/10程度である可能性が示唆された。 そこで、ヒト口腔上皮細胞では、かなり大量に細胞培養する必要があり、予算等の都合もあるので、口腔上皮細胞ではなくて、歯根膜線維芽細胞から分泌されるエクソソーム内のsmall RNAについて解析した。歯根膜線維芽細胞を培養し、得られた培養上清をExoQuick-TCで処理した。ここからTotal RNAを抽出した。得られたRNAをAgilent 2100 Bioanalyzer で解析したところ、20 - 1,000 nt の範囲のRNAが多かった。特に20 - 200 nt が豊富に存在した。更に、このRNAを用いてsmall RNA-Seq を行った。ライブラリー構築後、次世代シーケンサーIllumina HiSeq 2500 を使用し、Pair-End法 100塩基読み取りにより、塩基配列データを取得した。その結果、歯根膜線維芽細胞由来のエクソソームには、33 nt のisomiR-X1、32 nt のisomiR-X2、そしてmiR-Yがこの順に多く存在した。 以上より、ヒト歯根膜線維芽細胞は口腔上皮細胞よりも豊富にsmall RNAを含むエクソソームを分泌する可能性が示唆された。
|