研究課題
本研究は、がん幹細胞マーカーの一つであるCD44を恒常的に発現する口腔癌細胞を用いてCD44による細胞増殖及び多剤耐性化への寄与を解明する。CD44は上皮成長因子受容体 (EGFR)とcoexpressionすることが報告されているが、申請者らが作製した恒常的CD44ノックダウン細胞株は、どれも増殖曲線には大きな差は見られず、EGFRの発現やp-EGFRの活性化にも影響を及ぼさなかった。一方、CD44が一過性に過剰発現した場合、DNAダメージにおけるG2/M期のアポトーシス誘導が減弱されること、チェックポイントキナーゼ1の活性化に関与する経路であることを報告した。また一方で多剤耐性を解明するため、口腔がん細胞(HSC-3)のシスプラチン耐性株(R HSC-3)を作製した。このR HSC-3は、抗がん剤である5-フルオロウラシル、ドセタキセル、SN-38、エルロチニブ、ドキソルビシンにおいて3~100倍の抵抗性が見られ、交差耐性を獲得していることが明らかとなった。HSC-3およびR HSC-3の解析により、CD44の発現している細胞数に差はないが、R HSC-3は細胞に発現しているCD44が多いことが示唆された。さらにCD44 mRNAの発現を比較したところ、発現の増加が見られ、Immunoblot法による結果と相関した。細胞周期解析においてR HSC-3は静止期にいる細胞が多いことが明らかとなった。R HSC-3は、薬剤排出トランスポーターABCG2の発現を確認し、一方で、蛍光試薬を用いてその薬剤排出能を確認した。ABCG2は固形癌のがん幹細胞のマーカーとして報告がある。口腔扁平上皮癌の抗癌剤シスプラチン投与治療後に誘発される多剤耐性は、がん幹細胞に特徴的なCD44とABCG2を受け継いで再構成されたがん細胞の増殖によって治療抵抗性を獲得することが考えられた。
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