研究実績の概要 |
Kruppel-like factor 5(KLF5)は重層扁平上皮の基底細胞に発現し、その上層の細胞では急速に発現を停止する。上皮基底細胞の分化を抑制するとともに、増殖能の維持に重要であると考えられており、口腔扁平上皮癌細胞では高頻度に過剰発現をきたす。遺伝子発現機構を正確に理解することが正常口腔上皮・癌の病態解明に重要であると考えられるが、そのメカニズムは多くの点で不明である。 本研究課題では、ヒトKLF5遺伝子上流の長さが異なる9種類のプロモーター領域をルシフェラーゼ・レポータープラスミドにクローニングし、口腔癌細胞における必要最小領域(minimal essential region、MER)をレポーターアッセイで解析した。その結果、+145~+330 bpの186 bpsがMERであり、内在する転写因子結合配列のうち1か所のGC boxが特に重要であることがわかった。定量的クロマチン免疫沈降、short interfering RNA(siRNA)導入等の結果から、GC boxに結合する主要転写因子はSp3であり、GC box-Sp3結合がMERの活性とKLF5遺伝子の発現に必要不可欠な要素であることを明らかにした(Mihara et al., Gene 601: 36-43, 2017)。 上記の解析にともなって、KLF5遺伝子約2 kbp上流の領域にはKLF5発現を抑制するサイレンサーが存在することが予想された。そこで-2.8 kbpより下流の領域についてレポーターアッセイを行ったところ、-2,001 bp~-1,576 bpがサイレンサー領域であることが確認された。特にCREB1とdeltaNp63alphaが深く関与していることが強く疑われ、GC box-Sp3との関係について検討している(投稿準備中)。
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