研究課題/領域番号 |
26462861
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研究機関 | 松本歯科大学 |
研究代表者 |
今村 泰弘 松本歯科大学, 歯学部, 講師 (00339136)
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研究分担者 |
雪田 聡 静岡大学, 教育学部, 講師 (80401214)
安藤 宏 松本歯科大学, 歯学部, 講師 (30312094)
増田 裕次 松本歯科大学, 総合歯科医学研究所, 教授 (20190366)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 唾液蛋白質 / ヒスタチン |
研究実績の概要 |
1日に1~1.5リットル分泌される唾液は、消化、嚥下、咀嚼などの機能を果たし、口腔内の恒常性を維持している。唾液中の蛋白質は口腔疾患、特に、歯周病、う蝕、ウイルス感染症、炎症等と関係することが示唆されている。 唾液蛋白質ヒスタチンは歯周病原菌やカンジダ菌に対する抗菌作用、う蝕原因菌の増殖抑制作用がある。我々は、ヒスタチンがヒト歯肉繊維芽細胞(HGFs)内の熱ショック蛋白質HSC70と結合し、この複合体に負の細胞周期制御因子p27Kip1が結合すること、また、この3者複合体の少なくともp27Kip1とHSC70のユビキチン化が促進されることを明らかにした。これはG1からS期への移行促進を意味する。更に、ヒスタチンはHSC70で誘導される炎症性サイトカイン産生を抑制することが示唆された。しかし、ヒスタチンの更なる生理的機能は明らかにされていない。 インフルエンザウイルスは口・鼻腔から侵入し、咽頭・気道・肺で感染する。この感染症が重篤な場合、高齢者では肺炎、幼児では脳症となり死に至ることがある。娘ウイルスの感染細胞からの放出には、ウイルス膜表面にあるノイラミニダーゼを必要する。ここで、ウイルスの細胞への感染にヒスタチンがどの様な影響を及ぼすのか検討した。その予備的結果として、ヒスタチンは非常に低いレベルでウイルス感染を抑制する状況となったが、更なる検討が必要とされる。 慢性歯周炎は歯周病原菌の成分(リポポリサッカライドやペプチドグリカン(PGN))による持続的な刺激で炎症を呈する。これまでにヒスタチンはPGNによるToll様受容体を介したNF-kappaBの活性化を抑制することが示された。今回、ヒスタチンはHGFsのPGN刺激による炎症性サイトカイン産生を抑制することが判明した。 以上から、ヒスタチンは抗菌作用以外の新たな機能をもつ生理活性物質であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね計画的に進めており、少しずつではあるがデータを得つつある。今後は本研究の目的達成のために更に進めていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
研究においては、予期せぬことを生じてしまう可能性がある。また、実験系が困難な状況に陥ってしまう可能性もある。一方で、このような状況から思いがけず新しい知見を得る可能性もある。従って、予備検討実験を早めに行い、十分吟味して工夫し、実験系を確立できるようにする。また、学会参加や文献調査などにより、最先端の情報を収集して多くの研究者とディスカッションするようにし、本研究課題の推進に携わるよう努めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用予定の助成金を生じたが、おおむね計画通りに研究費を使用した状況となっている。試薬等は、キャンペーンなどの割引価格で購入することもあったため、若干の次年度使用額が生ずる結果となった。
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次年度使用額の使用計画 |
生じた次年度使用額は、試薬等の購入に使用する予定である。
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