アポトーシスに誘導された全ての細胞は、C5a受容体を発現し、そのアンタゴニスト・アゴニストリガンドであるリボソーム蛋白質S19(RP S19)の多量体を産生・放出する。RP S19多量体の一つの結合モチーフがオートクリン作用で自アポトーシス細胞のC5a受容体に結合すると、アポトーシス誘導トランスクリプション因子デルタ型ラクトフェリンの活性化を介してアポトーシス細胞死までの時間を短縮する。同時に、RP S19多量体のもう一つの結合モチーフがパラクリン作用でマクロファージのC5a受容体に結合すると、細胞外カルシウム導入因子野生型アネキシンA3の活性化を介してアポトーシス細胞の貪食処理までの時間を短縮する。 一方で、RP S19多量体を形成できないQ137G 変異RP S19遺伝子ノックインマウスを作製していた。このマウスは、炎症起炎物質カラゲニンを胸腔に投与すると、コントロール野生型マウスに比較して急性炎症病態が遅延した。そこで、今回C5a受容体アンタゴニスト・アゴニストリガンドの機能体として、RP S19の単量体ペプチドを調整し、そのペプチド多量体を作製した。RP S19のペプチド単量体に比較してペプチド多量体は急性胸膜炎モデルマウスの炎症病態を有意に消炎した。 以上から、RP S19多量体は少なくとも生体内でも急性炎症病態の回復期にマクロファージが好中球を貪食処理する作用に関与することが示唆された。
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