研究課題/領域番号 |
26462864
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
武富 孝治 久留米大学, 医学部, 助教 (10553290)
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研究分担者 |
楠川 仁悟 久留米大学, 医学部, 教授 (30258412)
讃井 彰一 九州大学, 大学病院, 講師 (70507780)
福田 隆男 九州大学, 歯学研究院, 助教 (80507781)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | シグナル伝達 |
研究実績の概要 |
エナメル上皮腫細胞株 AM-1 にSprouty2 を強制発現させ MAPK のリン酸化を調べたところ、FGF 刺激による MAPK のリン酸化は抑制するものの、EGF 刺激ではむしろ MAPK のリン酸化を増強した。このように Sprouty2 はFGF 刺激により細胞増殖を抑制する一方で EGF刺激では抗アポトーシスに作用することが分かったが、実際のヒトの下顎骨に発生したエナメル上皮腫ではどちらのシグナルが深く関与しているのかを調べるため、実際の切除切片を用いて免疫染色を行った。その結果、FGFの発現は強く認めるものの、EGFの発現は弱く、実際の病変において、FGF刺激によるエナメル上皮腫の増殖をSprouty2が抑制していることが示唆されることとなった。 一方で、エナメル上皮腫は顎骨内で増殖し、骨を吸収しながら発育することも知られている。そこで骨におけるSprouty2の作用を調べることがひいてはエナメル上皮腫増殖制御にもかかわることが考えられた。そこで、骨芽細胞におけるSprouty2の作用を調べるため、AM-1の場合と同じく、Sprouty2を強制発現し、FGFシグナルにおけるERK1/2のリン酸化への影響を解析したところ、ERK1/2のリン酸化を抑制した。これはsiRNAを用いたKnockdownの実験でも確認された。さらに、新たなシグナル伝達経路における働きとして、腫瘍の増殖に関わることが報告されているTGF-βシグナルにおけるSprouty2の作用を解析することにした。そのため、TGF-βスーパーファミリーの1つであるBMP2刺激におけるSmad1/5/8の活性化を解析し、Sprouty2が抑制することが分かった。このSprouty2がMAPK経路のみならずSmad経路も制御するという興味深い結果に関して、現在国際論文に投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
エナメル上皮腫増殖におけるSprouty2の制御機構について、細胞株AM-1を用いてそのメカニズムを解析し、AM-1において発現を強く認めたEGFが実際の切除切片では発現が弱かった。逆にFGFの発現が強かったため、従来のSprouty2の作用と同じく、FGFシグナルにおけるERK1/2の活性化を抑制することをAM-1で示した。一方で、エナメル上皮腫が骨に発生することに着目し、骨の増殖におけるSprouty2 の新たな作用を解析することで、エナメル上皮腫の制御に新たな見解が得られると考え、解析をすすめた。その結果、BMP刺激におけるSmadのリン酸化をSprouty2が抑制するという新たな発見が得られた。しかしながら、この新たな結果をいくつかの国際雑誌に投稿し、査読までは回るものの、in vitroの結果に留まることが理由で最終的にはリジェクトされ、別の国際雑誌に投稿しても同様であった。現在も指摘された修正箇所を修正後、再投稿し査読中である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、まず骨増殖におけるSprouty2の作用における新知見を記した論文のAcceptを目指す。そしてAM-1とエナメル上皮腫切片において、TGF-βシグナルにおけるSprouty2の作用を調べる。本来の研究機関を延長した理由として、論文投稿することが目的であるが、これまでの査読で多くがin vivoの結果まで求めるものが多く、組織切片なども積極的に用いながら解析を行うことで対応する。
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次年度使用額が生じた理由 |
現在、研究成果を報告するためオープンアクセス誌に投稿しているが、査読に時間を要しており、リバイスで追加実験を要求されることから、返事を待ってからの追加実験となるため、その追加実験のための研究資金を未使用としておく必要があった。また、受理された暁には、掲載費が要求され、広く研究結果を示すためにはこの掲載費を支払う必要があるため、次年度使用とした。
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次年度使用額の使用計画 |
現在投稿している論文の追加実験を指示された場合、これに使用し、掲載費にも使用する。さらに論文掲載後は、本研究テーマにも示した in vivoにおけるエナメル上皮腫におけるSprouty2の機能を調べるため、切除切片を用いた免疫染色を積極的に行うため、抗体や試薬費に使用する予定である。最終的にエナメル上皮腫に対する結果をまとめた論文投稿費に使用する。
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