研究課題/領域番号 |
26462868
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
金谷 聡介 東北大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (80375097)
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研究分担者 |
根本 英二 東北大学, 歯学研究科(研究院), 准教授 (40292221)
島内 英俊 東北大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (70187425)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 象牙芽細胞 / 細胞外カルシウム / BMP-2 / プロスタグランジンE2 |
研究実績の概要 |
露出した歯髄の創傷治癒を促すためには、象牙芽細胞による修復象牙質の形成を誘導することが重要である。骨形成タンパク質 (Bone Morphogenetic Protein; BMP) -2は象牙芽細胞の分化および石灰化を促進し、象牙質の形成を強く誘導する。申請者らはこれまで細胞外Ca2+は歯髄細胞のBMP-2発現を誘導することを報告してきた。本研究では、プロスタグランジンE2 (PGE2)受容体シグナルがこの反応を増幅する可能性について解析を行い、歯髄細胞における細胞外Ca2+によるBMP-2産生およびPGE2受容体活性化によるBMP-2産生増強を軸とした新規歯内治療法の開発に繋げることを目的とする。 現在までの実験から、細胞外カルシウム刺激はマウス歯髄細胞のBMP-2およびCox-2遺伝子の発現が増強すること、さらに繊維芽細胞増殖因子FGF-2遺伝子の発現も増強することが示唆された。一方、カルシウムと同じ陽イオンであるマグネシウム刺激ではこれらの遺伝子の発現は増強されなかった。プロスタグランジンE2合成阻害剤存在下で細胞外カルシウム刺激したところ、BMP-2およびFGF-2いずれの遺伝子発現増強も抑制されなかった。このことから歯髄細胞におけるBMP-2およびFGF-2発現増強にプロスタグランジンE2受容体シグナルは関与していないことが示唆された。またカルシウムイオンチャネルの関与について検討するため、カルシウムイオンチャネル阻害剤を用いて解析を行ったところ、カルシウムイオンチャネル阻害剤前処理でBMP-2およびFGF-2発現増強は抑制されなかった。このことからカルシウムイオンチャネルは関与していないことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウス歯髄細胞においては、細胞外カルシウムによる骨形成タンパク質(BMP-2)-2遺伝子発現増強にはプロスタグランジンE2は関与していないことが示唆された。しかしながら、細胞外カルシウムはマウス歯髄細胞のBMP-2遺伝子発現を増強するのみならず、再生に重要な繊維芽細胞増殖因子(FGF-2)-2遺伝子の発現も増強することが示唆された。このことは、細胞外カルシウムが強力に歯髄細胞による象牙質の再生を誘導することを示している。この細胞外カルシウムによるBMP-2およびFGF-2発現増強のメカニズムを詳細に解析することにより、より効率的に象牙質の再生を誘導できるようになる可能性がある。
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今後の研究の推進方策 |
歯髄細胞におけるBMP-2およびFGF-2遺伝子発現増強機構を解析していく。カルシウムイオンチャネルは関与しないことから、カルシウムセンシングレセプターなどのGタンパク共役型受容体が関与する可能性についても検討を行っていく。受容体の作動薬や他の陽イオン刺激によって歯髄細胞のBMP-2およびFGF-2遺伝子発現増強がみられるか解析する。プロテインキナーゼCおよびプロテインキナーゼAの関与について調べるため、これらの阻害剤を用いて検討を行う。またMAPキナーゼ(ERK1/2, JNK, p38)の阻害剤を用いてMAPキナーゼの関与についても検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
細胞外カルシウムは歯髄細胞のシクロオキシゲナーゼ2(プロスタグランジンE2合成酵素)遺伝子の発現を増強する結果が得られたものの、阻害剤を用いた実験から歯髄細胞における細胞外カルシウムによるBMP-2およびFGF-2の発現増強にプロスタグランジンE2の関与がないことが示唆された。このことから、細胞外カルシウム刺激による歯髄細胞のプロスタグランジンE2産生をELISAにて測定する必要はなくなったため。
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次年度使用額の使用計画 |
細胞外カルシウム刺激による歯髄細胞のBMP-2およびFGF-2遺伝子の発現増強機構について詳細に検討を行う。カルシウムを認識するGタンパク共役型受容体作動薬や、プロテインキナーゼCおよびプロテインキナーゼA阻害剤を用いて検討を行う。
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