研究課題/領域番号 |
26462870
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
兼平 正史 東北大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (30177539)
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研究分担者 |
石幡 浩志 東北大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (40261523)
高橋 英和 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (90175430)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 知覚過敏 / 象牙質透過性 / リン酸カルシウム / ハイドロキシアパタイト / マイクロフローセンサー |
研究実績の概要 |
知覚過敏処置後における症状の後戻りの原因ならびそのプロセスがいまだ解明されていないのは、知覚過敏の症状が本人の訴え以外に他覚症状として捉える事ができない事やプラセボ効果によるマスキングが発生する事があげられる。そのため知覚過敏症のin vivo解析およびin vitroシミュレーションには相当の困難が伴う。我々は、ルミノール化学反応を応用した象牙質透過性の定量的計測法を開発し、知覚過敏抑制材の効果を経時的に解析する手法を確立した。その構造は、発光トリガー液を試験片内に浸透させる事により他方のchamberに化学発光を生じさせ、その強度を高感度フォトダイオードにて検知して試料の透過性を計測するというものである。 平成27年度では、リン酸カルシウムを主成分とした知覚過敏抑制効果が期待できる材料を作製したが、本材料を用いて象牙質スライス試料への塗布実験を行い、象牙細管内部を共焦点レーザー顕微鏡および走査型顕微鏡にて観察した。その結果、どのような塗布方法を用いても粒度分布にバラツキが生じることがわかった。そこで、ごく微細な象牙細管の露出が知覚過敏症状に強く影響する事を考慮し、より狭い範囲での測定を可能とするマイクロフローセンサーを用いた計測装置を追加で構築した。本装置を導入する事により、より少ない面積での計測が可能となり、より実体に合った結果が期待できるようになるとともに、透過性試験では重要な指標である水力学的コンダクタンスを直接計測する事が可能となった。 本装置を用い、リン酸カルシウム系材料およびグルタールアルデヒドを含有する材料を用いた透過性の計測を経時的に1ヶ月まで行い現在解析を行っている。また、これとは並行して象牙質表面および細管内部の状態について、走査型顕微鏡、X線回折および飛行時間型二次イオン質量分析法を用いた分析を行い、内部の沈着物との関連性について解析をすすめている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度では、ルミノール化学発光を利用した象牙質ディスク透過性測定装置の解析を補完する目的で考案したマイクロフローセンサーを組み込んだ装置を、安定性と再現性に問題がないレベルになるように改良した。そのことにより、象牙質透過性計測に際し必要となる環境や設定条件に新たなる知見を得ることができた。 また、象牙質表面と象牙細管内にハイドロキシアパタイトの結晶生成が期待できるリン酸カルシウム系の材料を新たに作製し、本装置を用いて蒸留水中に試料を保管した基本的なデータを採取した。またその際に、海外で広く使用されているタンパク凝固系の知覚過敏抑制材および蒸留水との比較データをも採取した。 これとは並行して、象牙質表面および象牙細管内部の状態について、走査型顕微鏡、共焦点レーザー顕微鏡、X線回折および飛行時間型二次イオン質量分析法を用いた分析を行い、その生成物および組成の変化等の解析を継続しており、ほぼ計画どおりと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
象牙質知覚過敏症では、数少ない象牙細管の開口がその症状に強く影響するとされている。そのためin vitroで臨床症状をシミュレートするため、数本単位の象牙細管を考慮したできる限り少ない範囲の象牙細管の透過性を計測する事には非常に意義がある。そこで、平成27年度にマイクロフローセンサーを応用した象牙質透過性計測装置を考案し、我々が従前に行ってきた方法と比較・検討してみた。その結果、光化学発光を応用した方法の弱点を補完できうる事がわかった。そこで、象牙質表面と象牙細管内にハイドロキシアパタイトの結晶生成が期待できるリン酸カルシウム系の材料を新たに作製し、蒸留水中に試料を保管した基本的なデータを採取した。 今後の研究の推進方策としては、口腔内を想定した環境での計測を開始するとともに、象牙質内での変化についてリン酸カルシウム系知覚過敏抑制材の結晶生成速度や結晶の質を高めるための配合比、付加成分や環境要因等について試料数を増やしながら遂行し、透過性抑制効果破壊の過程を詳細に分析するとともにより効果の高い知覚過敏抑制材開発のための条件解析を詳細に行う。 特に象牙質を用いたこの主の研究では、成分変化による形態学的、結晶学的検討を注意い深く行う必要があり、象牙細管構造には個体差が大きく影響してくる事が予想されるため、統計学的に精度の高い研究データが得られるようデータ数に関しては十分に配慮する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 当該助成金が生じた主な理由は、消耗品の使用が少なかった事と外国旅費を使用しなかった事による。消耗品に関しては、既存の消耗品の利用等で一部補えた事と想定していた価格より物品を安価に購入できた事であり、外国旅費に関しては、得られたデータの信頼性を確認するための時間が予想以上にかかったため、予定していた海外での発表ができなかった事による。
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次年度使用額の使用計画 |
28年度では海外での発表を予定しているが、請求している消耗品の金額に併せ、追加での資料収集および発表を積極的に行う事により計画的に使用して行く予定である。
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